フリーランスとして独立すると、屋号は、開業届や確定申告など、さまざまなシーンで求められます。
屋号は必須ではなく、登録義務はありません。
しかし、フリーランスの場合、屋号によって受けられるメリットがあります。
そこで本記事では、屋号の決め方や、フリーランスが屋号を持つメリット・デメリットを解説します。
屋号の必要性を知りたい、屋号の決め方を知りたい人は、ぜひ本記事を読んでみてください。
フリーランスの屋号とは

屋号とは、個人事業につける名前のことをいいます。会社の場合、社名にあたるものです。
会社の場合は、代表者と会社は別の括りになるので、会社名をつける必要があります。
しかし、個人事業の場合は、屋号は必須ではありません。
そのため、屋号を持たないで活動するフリーランスも少なくありません。
フリーランスが屋号を利用するシーンは、以下の通りです。
- 事業用銀行口座の開設
- 請求書、契約書、見積書、領収書
- 確定申告
- 開業届
- 名刺
ただ、先述したように、屋号は必ず必要ではないため、確定申告の書類や各種届けに記載するために、わざわざ決める必要はありません。
フリーランスの屋号の決め方

いざ屋号をつけようと思っても、どうやって決めていいか分からないかと思います。
そこでこの章では、屋号の具体的な決め方を紹介します。
屋号に求められることは、「覚えやすくて、何の事業をしているか一目で分かる」ということです。
例えば、Webデザイナーなら、「○○WEBデザイナー事務所」といった屋号をつけておけば、一目でWebデザインをやっている人だと分かります。
Webデザインに関連する取引先が、仕事を依頼しやすくなるでしょう。
覚えやすく呼びやすいものにする
覚えやすい・呼びやすい屋号にするのも大切です。
分かりづらい屋号の場合、「あの人に仕事を頼もうと思ったけれど、屋号を忘れてしまった」となる可能性があります。
呼びにくい屋号の場合、電話などで屋号を伝えた際に、何度も聞き返されたり、間違ってメモされたりする可能性があります。
例えば、フランス語やドイツ語など、日本人が発音しづらいものですと、呼びにくいでしょう。
覚えやすい、呼びやすい屋号をつける際に、意識したいポイントは以下の2つです。
- 濁音・半濁音などを入れる
- 日本人が発音しづらく、読みにくい単語は避ける
濁点や半濁点を入れると、以下のようなインパクトを与えやすくなります。
- 濁音(ガ・ザ・ダ・バの各行の音節):重厚感や凄み、安心感
- 半濁点(ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ・ぴゃ・ぴゅ・ぴぇ・ぴょの各音節):語感が軽く、ポップ・可愛いイメージ
適度な長さにする
屋号には文字数制限はないですが、あまり長すぎないものがよいです。
長くなると屋号が覚えにくい、発音しにくい、書きにくいとなり、不便なことが増えます。
屋号の印鑑を作るときも、バランスが悪くなってしまいます。
もし長い屋号を思いついたら、略して短くするのも手です。
例を挙げてみると、
- ポケットモンスター→ポケモン
- ユニーク・クロージング・ウエアハウス→ユニクロ
- Daigaku Honyaku Center→DHC
上記の企業のように呼びやすくするために、略してすぐに覚えられるものが理想です。
フリーランスの屋号の例

屋号を決める際に、どのような例があるのかも気になるかと思います。
そこで、この章ではフリーランスの屋号の例を紹介します。
職種別に分けてみたので、該当する人はぜひ参考にしてみてください。
ライター
ライターの屋号の例は、以下の通りです。
- 本名 (佐藤太郎など)
- ペンネーム(架空の名前)
- 個人事務所(〇〇ライティング)
ペンネームは、「四葉みんと」「青山あおい」のように、架空の名前をつけることです。
また、「佐藤ライティング」のように、苗字と職業名を組み合わせ、個人事務所風にする方法もあります。
いずれの場合でも、一度検索して、同名や似たような屋号がいないかを確認しましょう。
デザイナー

デザイナーは、Webデザイナーや非Web系のデザイナー(イラストレーター・グラフィックデザイナー・インテリアデザイナー)でそれぞれ違うため、分けて説明します。
Webデザイナー
Webデザイナーの屋号の例は、以下の通りです。
- 本名
- ○○Webデザイン
- ○○Webデザイン事務所
- ○○Webデザイン工房
- Webデザインの○○屋
Webデザイナーの場合は、非Webのデザインと区別するために、「本名+Webデザイン」としたほうが、相手に分かりやすくなります。
他には、本名+事務所や、「工房」とつけて、和風テイストを入れるのも良いでしょう。
また「Webデザインの○○屋」のように、職人感を強調するネーミングにしても、面白いです。
デザイナー(非Web系)
Web系以外のデザイナーの屋号の例は、以下の通りです。
- ○○デザイン
- ○○イラスト工房
- アトリエ○○
- ○○インテリアデザイン
基本的には、Webデザインと同じ付け方で良いでしょう。
イラストを書いている人ならば「○○イラスト工房」、画室・工房など仕事場のイメージを出すなら、「○○アトリエ」という付け方もおすすめです。
エンジニア
エンジニアの屋号の例は、以下の通りです。
- ○○システム
- ○○技研
- ○○lab、ラボ
- ○○プロジェクト
「システム」というキーワードは、エンジニアを連想させる言葉の1つです。
スキルを強調したい場合は、「技研」という言葉を使うとよいでしょう。
「Lab」をつけると、専門性やプロフェッショナルなイメージを連想させます。コンサル的なニュアンスも含められます。
また、「プロジェクト」の表記を加えた屋号も、エンジニアの屋号として定番です。
表記を「Project」と英語にすれば、スタイリッシュさも出せるでしょう。
カメラマン
カメラマンの屋号の例は、以下の通りです。
- ○○studio
- ○○フォト工房
- ○○写真事務所
以上のように、写真を扱うことが分かる屋号にするのがおすすめです。
おしゃれな写真を撮影している人であれば、「Photograph」のような英語表記にすると、依頼するお客さんもイメージが沸きやすいでしょう。
フリーランスが屋号をもつメリット

フリーランスが屋号を持つと、どんなメリットがあるのでしょうか。
この章では、フリーランスが屋号を持つメリットを、まとめて紹介します。
屋号付きの銀行口座を作れる
フリーランスが、開業届を提出して屋号を付けると、銀行で個人事業主専用の「屋号付き銀行口座」が開設できます。
これにより、プライベートと支出を別にでき、事業にかかった費用が管理しやすくなるので、帳簿を付けるときにも便利です。
確定申告の準備も、スムーズに済ませられるでしょう。
取引先・社会からの信用が高まる
前項で述べた「屋号付き事業用口座」ですが、個人名ではなく、屋号が入った口座を持っていると、取引先からの信頼度が高まるメリットがあります。
屋号付き事業用口座を提示することで、「事業をきちんと行っている」という印象を持ってもらえるからです。
また、屋号があることで、クライアントとの取引・商談がスムーズに進む可能性があります。
自分の事業を覚えてもらいやすい
「○○ライティング」や「○○デザイン」といった屋号名を提示すると、
- 「ライティングをやっている○○さん」
- 「デザインをやっている○○さん」
といったように、取引先が、どんな事業をやっているか、を把握してもらいやすくなります。
これにより、仕事の受注にも繋がるでしょう。
商工会議所の加入がスムーズになる
屋号を持っていると、商工会議所の手続きが簡単になります。
商工会議所とは、地域の経営者や個人事業主のみが参加できる、商工業者の集まりです。
商工会議所の加入条件には、「個人事業主として開業している」という要件があり、屋号を持っていれば、開業届を提出していることも分かるので、加入がスムーズになります。
ちなみに、商工会議所は以下が有名です。
- 日本商工会議所
- あんしん財団
フリーランスが屋号をもつデメリット

一方、屋号をもつことで、どんなデメリットがあるのでしょうか。
この章では、デメリットについて説明をします。
屋号を決めるための手間と時間がかかる
特にフリーランスになりたての人なら、屋号をどのような名前にするか、悩んでしまいますよね。
真面目に考えるほど、時間もかかってしまいます。
ただ、屋号は必ずしも必要なわけではないので、「最適な名前が見つかったら、届け出る」と気楽に考えて良いでしょう。
事業内容が屋号により固定されやすい
「○○ライティング」や「○○デザイン」などの、職種に直結した屋号を付けると、仕事が固定されやすいというデメリットもあります。
例えば「○○ライティング」の屋号を持つ人が、デザインの案件に応募した場合「屋号はライティングなのに、デザインをするの?」と戸惑わせるでしょう。
複数の事業を持っている人は、事業別に屋号を分けることを、検討しみてください。
フリーランスの屋号の注意点

屋号を作る際には、いくつか注意点があります。
ここではその注意点についてまとめているので、屋号を作る時の参考にしてみてください。
屋号に使用できる文字を確認しておく
特に文字の決まりはなく、アルファベットや数字も屋号に利用できます。
他に利用できるものとしては、
- 「&」(アンパサンド)
- 「’」(アポストロフィー)
- 「,」(コンマ)
- 「-」(ハイフン)
- 「.」(ピリオド)
- 「・」(中点)
引用:法務省
以上の符号が利用できます。
屋号に使えない文字列がある
フリーランスは、「個人事業主」の屋号に該当するので、「~会社」「~Iinc.」といった、会社と誤認される文字列の利用はNGです。
また、商標権で守られている文字列も使えません。大手企業のブランド名やキャラクター名などが該当します。
例えば、ナイキ、ピカチュウ、くまモンなどです。
上記の文字列が屋号に入っていると、屋号を見た人は、「大手企業と関連している?」と勘違いする恐れがあります。
すでに登録されている屋号は避ける
すでに登録されている屋号を、同一市内で他の人が利用するのは、避けた方が賢明です。
近隣に同じ屋号を持っている人がいると、見た人が混同する恐れがあります。
屋号を考えたら、同一の表記がないかを、管轄の法務局で確認するようにしましょう。
この場合、法人に限られますが、地域内の屋号は確認できます。
屋号の登録方法
フリーランスの屋号を登録するには、法人とは違い、複雑な手続き・手数料などは必要ありません。
屋号を登録するには、開業届を税務署に提出する際、「屋号」の項目に記入します。
開業届とは「個人事業の開業・廃業等届書」のことで、新しく事業を始める際に税務署に提出するものです。
開業届は、税務署窓口・郵送・オンラインで提出できます。
なお、屋号を変更するには、確定申告の際に、申告書や決算書に新しい屋号を記載して提出するだけです。
開業届について詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてみてください。

まとめ

今回は、フリーランスの屋号の決め方と、屋号を持つメリット・デメリットを解説しました。
- 事業内容に即したものにする
- 覚えやすいものにする
などを屋号の名前にすると、仕事の受注にも繋がりやすくなります。
フリーランスの場合、屋号の登録・作成は必須ではありません。
しかし、本記事で紹介したように様々なメリットがあるので、一度検討してみてくださいね。
