フリーランスになったばかりの人は、源泉徴収の手続きや仕組みに戸惑ってしまう人が結構いるかと思います。
一度徴収された税金は、確定申告でお金が戻ってくるケースもあるので、フリーランスなら源泉徴収の仕組みはしっかり把握しておきたいところです。
そこで本記事では、フリーランス初心者に向けて、源泉徴収の手続きや仕組みを解説していきます。
源泉徴収に不安を抱いているフリーランサーは、本記事を参考にしてみて下さい!
フリーランスの源泉徴収とは

まずは、源泉徴収について簡単に説明をしていきます。
源泉徴収とは
源泉徴収とは、報酬を支払う人が、あらかじめ所得税などを差し引いたうえで支給し、代わりに納税する仕組みのことです。
会社員の場合は、本人ではなく、会社が代わりに給与から源泉徴収を行い納税します。
「年末調整で還付を受けた」という人もいるのではないでしょうか?
これに対してフリーランスの場合は、自分で確定申告を行って所得税の申告を行います。
確定申告をしなければ、源泉徴収で多く納めすぎた税金は還付されないことになります。
確定申告については、記事の後半でまとめているので参考にしてください。
源泉徴収をしないとどうなる?
源泉徴収を無視する行為は、「納めるべき税金を納めない」ということ。
源泉徴収されるべき税金があるのに、確定申告でそれを申告しないとなると、ペナルティを受けることになってしまいます。
納めるべき税金がさらに増えてしまうので注意しましょう。
源泉徴収される場合とされない場合の違い

フリーランスの報酬は、請負った仕事の内容が特定のものの場合、必ず源泉徴収されることが法律で決まっています。
フリーランスは、どのような仕事が該当するのか確認しておきましょう。
源泉徴収の対象となる仕事
源泉徴収のあり・なしは、仕事によって異なり、所得税法の第204条1~8の法律で定められています。
フリーランスが報酬を受け取る際に、源泉徴収対象されなければならない仕事は以下の通りです。
- 原稿料、講演料、デザイン料
- 弁護士、公認会計士、司法書士等へ支払う報酬
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- プロ野球選手、プロサッカーの選手、モデルなどに支払う報酬
- 映画、演劇等の出演等の報酬、料金、芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬
- 客に対して接待等を行っているホステスなどに払う報酬
- プロ野球選手の契約金などの一時に支払う契約金
- 広告宣伝費のための賞金と馬主に支払う賞金
引用:国税庁
上記は少し分かりにくいので例を出すと、
- Webライティング・・・原稿料
- Webデザインやロゴ制作・・・デザイン料
にあたり、源泉徴収の対象になります。
ちなみに、ホームページ制作のコーディングやプログラミングは、「デザイン料」に該当せず、源泉徴収がありません。
フリーライターである筆者の場合ですと、報酬は「原稿料」にあたります。
毎回の報酬に源泉徴収がかかり、余分に支払った税金は確定申告をした後に戻ってきます。
源泉徴収あり・なしで取るべき対応

源泉徴収は、取引先であるクライアントが、報酬支払時に代わりに納めている場合と、確定申告で自分で納める場合があります。
いずれのケースでも確定申告での対応が必要です。
源泉徴収ありの場合
経費や控除を差し引いて算出した「課税所得」が、源泉徴収された金額よりも少なければ、税金を払いすぎていることになります。
その場合は確定申告をすることで所得税が還付されます。
源泉徴収なしの場合
フリーランスで働いていると、報酬が振り込まれる際に、源泉徴収されていないことがしばしばあります。
そういったケースでも所得税は発生するので、自分で申告し納税しなければなりません。
確定申告で決定した、経費や控除を差し引いた「課税所得」にかかる税金を、自分で支払うことになります。
クラウドソージングの源泉徴収

クラウドソーシングでは、源泉徴収が必要な契約に関しては、クライアント(発注者)に源泉徴収を行う義務があります。
(クラウドソーシング事業者は仲介手数料のみ支払い)
つまり、ライティングやWebデザインのような源泉徴収が必要な仕事は、発注者と受注者間で相談し、契約時に「源泉徴収」を設定しなければなりません。
クラウドソーシングの大手、「クラウドワークス」や「ランサーズ」では以上のような規定になっていました。
ちなみに、後述する支払調書に関しては、契約後でも発注者に発行を依頼できます。
フリーランス同士では源泉徴収はされない
人を雇用していないフリーランス同士の取引なら、源泉徴収はされません。
友人に仕事を頼んだり、個人間で取引をしたりする場合は、源泉徴収はないことを取引相手に伝えておくと良いでしょう。
ただし、金銭が関わることなので、後々トラブルにならないよう、報酬などの取り決めは書面に残しておくのが無難です。
フリーランスの源泉徴収税額の計算方法

フリーランスの源泉徴収税額は、報酬の額によって異なりますが、ここでは基本的な計算方法を紹介します。
報酬100万円以下の場合
報酬が100万円以下の場合は、支払われる額×10.21%(税率)で算出されます。
例えば報酬が10万円の場合は、10万×10.21%=10.210円という計算になりますね。
報酬100万円以上の場合
報酬額が100万円以上の場合は、(支払われる額-100万円)×20.42%(税率)で算出されます。
例えば報酬が200万円の場合は、200万-100万×20.42%=204,200円という計算になります。
源泉徴収が関係する請求書の注意点

源泉徴収される報酬の場合であっても、請求前に発注者(クライアント)とすり合わせを行いましょう。注意すべきポイントは2つあります。
- 消費税の取り扱い
- 源泉徴収の有無
消費税の取り扱い
基本的に源泉徴収は、消費税を含んだ「報酬額の金額」が対象です。
ですが、請求書で報酬と消費税が明確に区分されている場合は、消費税を除いた報酬の金額のみを源泉徴収の対象にできます。
消費税を含んだ分、源泉徴収される額も増えるので、消費税が明確に分けられている場合は、報酬の金額のみを請求書に記載するようにしましょう。
源泉徴収の有無
源泉徴収は、フリーランスに報酬を支払った、クライアント側に源泉徴収を行う義務があります。
先ほども説明したように、源泉徴収になる仕事とならない仕事があるので、自分が請求する報酬が、源泉徴収の対象かどうかを把握する必要があります。
請求書の源泉徴収の記載方法と計算例
ここからは、実際に請求書を作成する際の計算例をパターン別に説明します。
源泉徴収されない場合
ホームページ制作 11,000円(消費税込み)
ホームページ制作は源泉徴収の対象にならないので、11,000円をそのまま請求書に記載することになります。
源泉徴収される場合
執筆料 11,000円(消費税込み)
執筆料は源泉徴収の対象になります。
11,000円×10.21%=1,021円
なので報酬額に10.21%をかけて源泉徴収額を算出します。
税抜きと税込みが混同している場合
- 執筆料 10,000円
- 消費税 1,000円
- 合計 11,000円
上記のような場合は、税抜きで計算する方法と、税込みで計算する方法の2通りがあります。
- 税抜きで源泉徴収をする場合は、10,000円×10,21%=1,021円
- 税込みで源泉徴収をする場合は、11,000円×10.21%=1.123円
ただし、消費税を区別して計算した方がおトクになります。
源泉徴収は確定申告で還付できる

確定申告は、フリーランスにとって、支払いすぎた税金を還付できるチャンスでもあります。
逆に言うと、確定申告を正しく行わないと、税金を余分に支払う可能性もあるということです。
ここでは、フリーランスが損しないために、確定申告で源泉徴収が戻ってくるケースや、確定申告の一連の流れについて説明していきます。
確定申告で源泉徴収が戻ってくるケース
フリーランスの源泉徴収は、報酬が100万円以下なら、一律で10.21%の所得税が差し引かれます。
しかし、年間の課税所得が195万円以下ならば税率は5%になります。
すると、余分に所得税を払っている(10.21%-5%)ことになるので、過剰に支払った分は還付金として返ってきます。
経費と控除(基礎控除、生命保険料控除など)を差し引けば、課税所得を少なくすることができるので、税金が返ってくる可能性は高くなるでしょう。
経費と控除で節税するコツは以下の記事を参考にしてください。

源泉徴収額を確認する

確定申告をする前に、会計ソフトや帳簿付けで、案件ごとの源泉徴収額を整理しておきましょう。
源泉徴収された分がどれだけあるのか、把握しやすいよう分けておくのがおすすめです。
また、「源泉徴収票」と「支払調書」があれば、取引先ごとの源泉徴収額を確認できます。
源泉徴収票とは
源泉徴収票によって、支払われた給与といくら税金が納めたかが分かります。
1年間ずっとフリーランスをしていた人は必要ない書類ですが、年度内に会社員や派遣社員、アルバイトなどだった人は、会社から送付されるはずです。
2019年4月から、確定申告で源泉徴収票を提出する必要はなくなりましたが、申告書に報酬の内訳を記載する際、あったほうが便利な書類です。
支払調書とは
支払調書は、報酬や料金を「支払った側」であるクライアント側が作成する書類です。
一般的に1月中旬~下旬ごろに郵送・メール・チャットツールなどで送られますので、見落とさないようにしましょう。
支払調書に記載していることは以下の通りです。
- 報酬金額
- 源泉徴収額
ただし、所得税法上、会社はフリーランスに支払調書を送る義務はありません。受け取ったとしても、支払調書を確定申告で添付する必要もないです。
そうなると、「意味がないのでは?」と感じますよね。
しかし、日常的に帳簿をつけていない場合は、支払調書を見ればこれまでの金額が把握できます。
必要だと感じたら、取引先に支払調書に発行を依頼するのも手です。
確定申告書を作成する

源泉徴収額が把握できたら、実際に確定申告書を作成しましょう。
確定申告書の入手方法は以下の3通りです。
- 国税庁のWEBサイトからダウンロードする
- 税務署や市区町村役場の税務課、または確定申告相談会場で受け取る
- 税務署から郵送で受け取る
確定申告書には確定申告書Aと確定申告書Bの2つがありますが、フリーランスの場合は確定申告書Bを利用することになります。
確定申告書を提出する
確定申告書は以下の方法で提出できます。
- 税務署の窓口で提出する
- 税務署に郵送をする
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)で送る
確定申告を始めてする人は不安があると思うので、相談したい場合は税務署の窓口に行くと良いです。
慣れてきたら郵送やe-Taxを使うのがおすすめです。
確定申告の期間中は混雑が予想されるので、郵送とe-Taxなら並ばずにすむでしょう。
確定申告の詳しい内容は以下の記事が参考になります。

おわりに

フリーランスの源泉徴収のポイントをまとめると、
- 源泉徴収をされる仕事とされない仕事がある
- 自分が請負った仕事は、源泉徴収の対象になるかを把握しておく
- 源泉徴収された分は、確定申告によって戻ってくるケースがある
この3つが特に重要です。
そのため、フリーランスは源泉徴収の仕組みをしっかり把握しておきましょう。
