フリーランスになって事業をスムーズにスタートするには、いろいろな準備や手続きを独立前に済ませておく必要があります。
時間のかかるものや期限が設定されているものがあるので、余裕を持って始めなくてはなりません。
そこでこの記事では、フリーランスになるための事前準備を時系列に沿って解説しました。上から順番にこなしていくようにしましょう。
なお、この事前準備は「会社を退職すること」が前提なので、会社に勤めながら副業としてフリーランス活動をする人は該当しません。
退職前に済ませておくべき準備3つ
まず、会社を退職する前に済ませておくべき準備は3つあります。
- クレジットカードの作成
- 賃貸契約
- ローンの申請
1.クレジットカードの作成
もし、退職前の時点でクレジットカードを1枚も持っていないのなら、会社を辞める前に最低でもカードを2枚作っておきましょう。
なぜなら、フリーランスは会社員に比べて社会的信用が低く、フリーランスになってからだとクレジットカードの審査に落ちる可能性があるからです。
また、2枚作るべき理由ですが、1枚を事業用、もう1枚を生活用にするためです。
フリーランスになると確定申告をする必要が出てきますが、その際「事業用のクレジットカードで払ったもの=経費」として扱えるので、生活費との区別がしやすくなります。

2.賃貸契約

信用度の面から賃貸契約の審査も通りにくくなります。
会社員以上に稼いでいるフリーランスでも部屋を借りるのに苦労した、という話はあちこちで聞かれますので、フリーランスに対する信用のなさは相当です。
場所を選ばずに仕事のできるフリーランスですが、「作業専用の場所を持っておきたい」と考える人は多いので、会社員という身分があるうちに賃貸契約を済ませておきましょう。
審査が通らない場合や、費用負担を抑えたい場合は、コワーキングスペースやシェアオフィスがおすすめです。
上記ならフリーランスになった後でも比較的簡単に契約できるでしょう。
3.ローンの申請
もし、フリーランスになろうとしている段階で車や住宅の購入を考えているなら、会社を辞める前にローンを組んでしまいましょう。
理由は、クレジットカードや賃貸契約と同じく、フリーランスは社会的信用がないため審査に通りにくくなるからです。
住宅ローンやマイカーローンは賃貸契約以上に扱う金額が大きいですから、フリーランスの立場でローンを組むにはかなり苦労します。
フリーランスとしての仕事に集中するためにも、そういう苦労はできるだけ避けましょう。
退職後に済ませておくべき準備4つ
次に、会社を退職後にしなくてはならない準備を解説していきます。
ここで挙げるのは期限が明確に決まっているものばかりですので、特に注意してみてください。
- 保険の切り替え
- 国民年金への加入
- 開業届の提出
- 青色申告承認申請書の提出
1.保険の切り替え
会社員時代には企業の健康保険(通称:社保)に入っていた人が多いでしょうが、フリーランスになると保険を切り替える必要が出てきます。
切り替え先はおもに以下の2つです。
- 国民健康保険(通称:国保)へ加入する
- これまでの社保を任意継続する
任意継続すると、会社員時代の社保を最長で2年間継続できます。
ただし、会社員時代は半分の保険料を会社が支払ってくれていましたが、任意継続になると全額自己負担になるので注意が必要です。
以下の表に、国民健康保険と任意継続の違いをまとめました。
窓口 | 期限 | 持ち物 | 備考 | |
国民 健康保険 |
市区町村 役場 |
退職後 14日以内 |
健康保険資格喪失書 印鑑 身分証明書 |
|
任意継続 | 健康保険組合 協会けんぽ |
退職後 20日以内 |
任意継続 被保険者資格 取得申出書 |
2ヶ月以上 社保に加入していたことが条件 |
なお、どちらの方が保険料が安くなるかは人によって異なります。
住んでいる地域の役所の「国民健康保険課」と、会社員時代に加入していた「健康保険組合」か「協会けんぽ」に電話して保険料を確認し、安い方に切り替えるようにしましょう。
2.国民年金への加入
会社を退職したら、前項で述べた健康保険とともに、年金の切り替えもしなくてはなりません。
会社員時代には厚生年金に加入し、保険料の半分を会社が負担してくれていましたが、退職後は全額自己負担となります。
以下に切替時の窓口などをまとめました。
窓口 | 期限 | 持ち物 |
市区町村 役場 |
退職後 14日以内 |
年金手帳 退職を証明するもの 印鑑 身分証明書 |
厚生年金から抜けて国民年金だけになると、将来もらえるだろう年金の金額は少なくなる可能性が高いです。
少しでももらえる金額を増やしたいなら、国民年金に上乗せできる「国民年金基金」「付加年金」への加入を検討してみてはいかがでしょうか?
3.開業届の提出
開業届とは、税務署に「これからは個人事業主になって働きます」と報告するための書類です。
提出しなくてもフリーランス事業は開始できますが、開業届を出すと以下のようなメリットがあるので、ぜひ提出しておきましょう。
- 青色申告承認申請書を提出できる(青色申告できるようになる)
- 小規模企業共済に加入できるようになる
- 屋号での口座開設ができるようになる
また、税務署で開業届を提出した際は、必ず控えをもらってください。(いろいろな証明に使えるため)
以下に開業届の概要をまとめました。
窓口 | 期限 | 持ち物 |
税務署 | 事業開始 1ヶ月以内 |
印鑑 身分証明書 |
なお、開業届と、この後に解説する「青色申告承認申請書」はどちらも窓口が税務署なので、一緒に提出するのがおすすめです。
とはいえ、税務署に行ってから記入するのではかなり時間がかかります。
そういう場合は、個人事業の開業に必要な書類を無料で作成できる「開業freee」がおすすめです。
簡単な質問に答えるだけでサクッと書類を作ってくれますし、税務署が遠方の場合は郵送するための準備までしてくれますよ♪
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4.青色申告承認申請書の提出
フリーランスになったら避けて通れないのが確定申告です。
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、青色申告しか受けられない控除もあります。
青色申告をするためには、開業届と青色申告承認申請書の提出が必須です。
以下に青色申告承認申請書の概要をまとめました。
窓口 | 期限 | 持ち物 |
税務署 | 事業開始 2ヶ月以内 |
印鑑 身分証明書 |
開業届の際にも述べましたが、開業届と青色申告承認申請書は窓口が同じなので、2つ一緒に提出してしまった方が楽です。
もし税務署での記入が面倒なら、「開業freee」の無料サービスを使って、事前に書類を作っておくことをおすすめします。
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フリーランス開業前に準備するもの7つ
保険や年金などの手続きが済んだら、いよいよ事業に関する設備を整えるようにしましょう。
中には開業してからでも間に合うものもありますが、事業開始直後はとにかくバタバタするので、先に準備しておいた方が楽です。
- 仕事用の銀行口座と印鑑
- 名刺
- SNSやメールアドレス
- ポートフォリオ
- 必要書類のテンプレート
- 機材や備品
- 会計ソフト
1.仕事用の銀行口座と印鑑
フリーランスとしての事業をスタートさせる前に、これまで使っていた銀行口座とは別に、仕事専用の口座を開設しておきましょう。
事業での売上をその口座に振り込んでもらえば、生活費と事業に関係するお金を完全に分けることができ、管理が楽になります。
開業届に屋号を記入して提出していれば屋号で口座開設できるので、名義から分けてしまった方がわかりやすいですね。
さらに、仕事用の銀行口座と仕事用のクレジットカードを紐付けしておけば、事業関連のお金の流れは完全に一本化できます。
2.名刺
出会った人に自分を知ってもらうためのアイテムとして、名刺があると便利です。
フリーランスの仕事を途切れずに稼ぎ続けるためには、人脈作りは欠かせません。
ビジネス交流会や勉強会などのイベントに参加し、そこで出会った人に名刺を渡して営業をかけていきます。
安く名刺を印刷してくれるサービスはたくさんあるので、思わず目を引く魅力的なデザインに挑戦してはいかがでしょうか。
3.SNSやメールアドレス
フリーランス活動をスタートしたことや、事業内容を発信するために、SNSは有効活用すべきです。
ブログ・Twitter・Instagramなどで仕事用のアカウントを作り、定期的な発信を心がけましょう。
また、仕事を受注した際にクライアントとやり取りできるよう、仕事用のメールアドレスも必要です。
Gメールなどのフリーアドレスでも問題はありませんが、ブログの独自ドメインを使ったオリジナルのメールアドレスを作っておくと信頼性が高まります。
4.ポートフォリオ

ポートフォリオとは自分の実績をまとめたもののことです。
- WebデザイナーならこれまでにデザインしたWebサイトやロゴ
- ライターならこれまでに執筆した記事
などが該当します。
営業時に自分のスキルを具体的に示すには、これまでに作った作品を見せるのが最も手っ取り早いです。
ブログなどで、ポートフォリオをまとめたページを作っておけば、そのページのURLをメールに添付するだけでポートフォリオを相手に届けられます。
仕事を受けるたびに実績は増えていくので、ポートフォリオもどんどん更新していきましょう!
5.必要書類のテンプレート
事業で発生するやり取りで、請求書・領収書・見積書・納品書などの書類は絶対に必要です。
それらの書類のひな形となるテンプレートを事前に用意しておけば、やり取りがスムーズに進みます。
自分の住所や電話番号など毎回同じ部分は先に入れておき、あとは日付や金額などを入力するだけにしておきましょう。
6.機材や備品
フリーランスの事業をしていくうえで、以下のような機材や備品は用意しておいた方がいいですね。
- パソコン、タブレットなどの電子機器
- デスク、イスなどの設備
- 封筒、切手、ボールペン、ノートなどの消耗品
これらの購入にかかった費用は、開業年分の確定申告で「開業費」として計上できるので、必要なものはまとめて用意しておきましょう。
7.会計ソフト
フリーランスにとって、確定申告はかなり手間のかかる作業です。
事業の収支の管理方法は人それぞれですが、会計ソフトを使うと管理だけでなく確定申告の準備までできるので、作業がだいぶ楽になります。
会計ソフトを利用するにはお金がかかりますが、確定申告が楽になることを考えれば必要経費と言えるのではないでしょうか。
まとめ

フリーランスになるための事前準備を、時系列に沿って解説しました。
会社を退職する前後の手続きは特に重要なので、必要事項をしっかり把握しておきましょう。
手を抜かずに事前準備をすることで、フリーランスとしての事業をスムーズに始められますよ!
