会社を辞めてフリーランスになると、厚生年金に加入していたのを脱退して国民年金に切り替えなければなりません。
そのため会社員よりも、将来貰える金額が大幅に下がってしまいます。
将来の年金額が不安なフリーランスの方も多いことでしょう。
今回の記事では、将来の年金額が不安なフリーランスの方に向けて、国民年金と厚生年金の違いや将来年金を増やす方法について解説をしていきます。
「将来の年金を増やしたい」と考えているフリーランスの人はぜひ参考にしてみて下さい!
フリーランスと国民年金
まずフリーランスと国民年金の関係性について説明をしていきます。
会社員が加入する厚生年金と比較しながら、フリーランスが加入する国民年金の仕組みを見ていきましょう。
厚生年金と国民年金の仕組みの違い

図を見てみると、右側の会社員は老齢厚生年金(厚生年金)に加入することができるので、自動的に年金が国民年金と厚生年金基金の2階建てになります。
対して左側のフリーランスは、国民年金の上に国民年金基金が乗っていますよね。
国民年金基金はあくまで任意で加入する公的年金なので、国民年金だけが加入義務がある年金制度になります。
将来もらえる年金はいくら?国民年金なら僅か月6.5万円!
20歳から60歳までの40年間で年金がいくらになるかシミュレーションしていきましょう。
国民年金の場合
すべての期間、国民保険料を納付していた国民年金の加入者は、78万100円の年金を毎年受け取ることができます。
月額にすると6.5万円が受け取れます。
厚生年金の場合
対して厚生年金に40年間加入しているなら、その期間の平均収入(月額換算した賞与を含む)が月額42.8万円の場合、月額約9.1万円の老齢厚生年金+月額約6.5万円の老齢基礎年金を合計した、月額約15.6万円を受け取ることが可能です。
年間で大きな差が出てくる
国民年金と厚生年金を比較すると、月に10万円、年にすると120万円ほど差が出てしまいます。
国民年金だけでは会社員よりも貰える年金額が少なくなってしまい、それだけでは十分な年金生活が送れるとは言えないですよね。
そのため、フリーランスなら国民年金基金などを検討し、老後に備えていく必要があります。
本記事では後ほど、フリーランスができる年金の増やし方を紹介するので是非参考にしてみて下さい!
国民年金の月額保険料はいくら?
国民年金の月額の保険料は16,410円になります(令和2年現在)。
先ほど説明したように、フリーランスで加入義務があるのは国民年金のみです。
会社員のように、会社が年金を折版してくれるわけでもないので、自分で満額を支払わなければなりません。
また、将来の給付額は支払った加入期間によって決定します。
満期加入の場合は満額もらえますが、加入期間が短くなれば、その分の年金が減額されてしまいます。
老後の生活費はどれくらいかかる?年金だけで足りるの?

出典:老後の生活費はいくらくらい必要と考える?|公益財団法人 生命保険文化センター
「公益財団法人 生命保険文化センター」のアンケートによると、老夫婦2人で最低限の老後生活を送るには月額で平均22.1万円必要との結果がでています。
ただし詳しい内訳が載っていないため、食費などを節約すれば、この平均より少し下げられるかもしれません。
分布を見てみると「20万~25万未満」と答えた人が29.4%と一番割合が大きいですね。
国民年金を満額払ってたとしても月額6.5万円になるので、明らかに国民年金だけで老後の生活を成り立たせていくのが厳しいということが分かります。
国民年金を払わないとどうなる?
国民年金には支払い義務がありますが、支払わないと以下のペナルティを受けてしまいます。(20歳以上の全ての人が年金制度に加入する義務がある)
- 催告状が送られる
- 差し押さえ予告と財務調査の実施
- 差し押さえによる強制徴収
催促状と差し押さえ
納付期限が過ぎても支払っていない場合、被保険者に催促状が届きます。
さらに、電話での催促も行われます。
催促状が来た段階では、まだペナルティは発生していないので対象の未納分を必ず納付して下さい。
催促状が届いたのにも関わらず、未納のままにしておくと「最終催促状」が送られてきます。
最終催促状を送付されても保険料の納付がない場合は、延滞金と財産差し押さえ処分が明示された督促状が送付されてしまいます。
この督促状が指示する支払い期限までに延滞保険料を払わなかった場合は、当初の保険料納付期日にさかのぼって年利14.6%の延滞金を課せられてしまいます。
家族や所有物にも影響がある
また、保険料を滞納している本人だけでなく、世帯主や配偶者(連帯納付義務者)も徴収の対象です。
なので義務者に対しても財産の差し押さえ予告が出されてしまい、所得や財産などの調査が行われてしまいます。
差し押さえによる強制徴収だと、現金や預貯金、不足があれば土地や車までも差し押さえの対象になります。
自分で納付しようとすると忘れてしまうかもしれないので、会社員での天引きのように口座振替で自動で引き落としするようにすると忘れてしまうリスクを軽減できます。
フリーランスが国民年金を安くする方法
フリーランスは必ず国民年金に加入し、さらにペナルティを受けないためには毎月欠かさず納付しなければなりません。
しかし、この負担はとても大きいですよね・・・。
そこでここからは、フリーランスが国民年金を安くする方法についても説明をしていきます。
①国民年金保険料免除制度を利用する
一時的に年金が支払えない場合は「国民年金保険料免除制度」を活用して年金の免除をするのがおすすめです。
国民年金保険料免除制度は、経済的な理由などにより年金が払えないことを年金事務所で伝えることで、1年間の年金を免除をしてくれる制度です(免除申請は1年ごとに必要です)。
ただ免除している期間は年金を支払っていないため、その分将来の年金額が減ってしまいます。
免除してから10年後なら追納することができるので、将来の年金額を減らしたくないという人は後で追納するようにしましょう。
フリーランスは自営業であるため、最初の1年間辺りは売上が上がらなくて困窮してしまうかもしれません。
最初の売上が上がらない時は年金を免除しておき、売上が上がって生活に余裕が出たら年金の追納をするのがおすすめです。
②結婚して扶養に入ると国民年金の支払い対象外になる
フリーランスが結婚して配偶者の扶養内に入り「第3号被保険者」になると、国民年金が免除になります。
扶養内に入る条件としては、2020年4月現在で「年間(1~12月)収入130万円未満」となります。
国民年金と国民健康保険料は、年間30万円ほど支払うことなっていますが、年収130万円以上稼いだ場合、30万円引かれて収入も100万円程度になってしまうため、働き損ですよね。
年収130万円付近であれば扶養内に収めておくと節税になり、それ以上稼ぎたいという場合は扶養を外れてバリバリ働くという選択を検討しましょう。
配偶者が所属する会社や組合によっては、「130万円」が経費や控除を差し引いた額か、引かない額かが異なるようですので注意しましょう。
③確定申告で社会保険料控除を受ける

フリーランスの場合、確定申告により控除が適用されると税金の負担を減らすことができます。
社会保険控除が適用されると年間で20万円程度を控除でき、節税にあてることができるでしょう。
控除とは?
控除とは収入から一定の金額を差し引くことをいいます。
フリーランスは、収入-控除=課税所得 で課せられる税金(所得税)の計算が行われます。
この課税所得が税金を掛けられる額になるため、いかに課税所得を減らすかがポイントというわけです。
控除できるもの
フリーランスが控除できる種類としては以下の表の通りになります。
控除の種類 | 対象者 | 控除額 |
---|---|---|
基礎控除 | 誰でも控除の対象 | 48万(令和2年分から) |
社会保険料控除 | 国民健康保険料 国民年金基金を支払っている人 |
全額が控除の対象 |
扶養控除 | 扶養家族にあたる人の人数 子供の人数に応じて控除 |
38万、48万、58万、63万円 |
配偶者控除 | 配偶者がいる人 | 最高38万 |
生命保険料控除 | 生命保険に加入している人 | 最高5万円 |
地震保険料控除 | 地震保険に加入している人 | 最高5万円 |
医療費控除 | 健康保険が適用される医療行為を受けた人 | 医療行為の自己負担額が10万円を越えた分が控除 |
住宅ローン控除 | 住宅ローンを受けている人(返済期間が10年間の間) | 年末時のローン残高の1% |
小規模企業共済控除 | 小規模企業共済を受けている人 | 掛金の全額 |
青色申告特別控除 | 青色申告を申請した人 | 最高65万円 |
基礎控除と青色申告特別控除をフリーランスは受けられるので、この2つだけでも48万円+65万円=113万円の所得控除を受けられます。
控除に必要なもの
控除を受けるには、控除を証明してくれる書類がそれぞれ必要です。
控除を受ける人は準備しておきましょう。
社会保険料控除 | 社会保険料控除証明書 (国民年金保険料、国民年金基金保険料) |
生命保険料控除 | 生命保険料控除の証明書 |
地震保険料控除 | 地震保険料控除の証明書 |
医療費控除(医療費が年間10万円をこえた人) | 医療費の明細書(医療費控除)
医療費に関わる交通費の明細書(医療費控除) |
住宅ローン控除 | 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
住民票の写し 売買契約書の写し 登記事項証明書の原本 金融機関の住宅ローンの残高証明書 |
小規模企業共済控除 | 小規模企業共済掛金払込証明書 |
安定した老後のために!フリーランスができる年金の増やし方
フリーランスが安定した老後の生活を送るには、国民年金の負担を減らす以外に、自分で年金を増やしていくことも必要です。
以下では年金を増やせる方法についてもまとめました。
年金の増やし方① 付加年金
付加年金は公的年金の一つです。月額400円を支払うことで、将来の年金額を上乗せできる制度になります。
メリット
- 掛け金額が少ないから気軽に始められる
- 2年で元が取れる
- 毎年決まった額がもらえる
- 全額が所得控除になる
付加年金の最大のメリットは、掛け金額が400円と少ないから気軽に始めやすいということです。
また掛金額400円で200円増やせるため、2年継続すれば元が取れます!つまり、2年以上払い続けるとおトクです。
毎年決まった額が貰えるのもメリットですね。
そして付加年金は支払った金額がすべて所得控除の対象になるので節税効果もあります。
デメリット
- 増える年金額がそこまで多くない
- 国民年金基金と併用できない
- インフレに弱い
国民年金基金と付加年金は併用して利用することができず、増やせる額が少ないです。
なので、まとまった額の年金を増やしたいという場合は、国民年金基金の利用をおすすめします。
また付加年金は定額なのでインフレに弱いです。
どれくらい年金は増えるの?
例えば30歳から60歳まで30年間保険料を支払った場合は以下の通りになります。
- 支払った保険料総額が400円×360カ月=144,000円
- 加算される年金額が200円×30年=7万2,000円
ご覧のように掛金が少ないためそこまで年金は増えません。
なので少ない金額をコツコツ払って少しでも年金を増やしたい、節税をしたいという人は付加年金を検討しましょう。
年金の増やし方② 国民年金基金
国民年金基金は、厚生年金のような国民年金に上乗せできる自営業者のための年金です。
1カ月の掛け金額の上限は68,000円です。ただし、iDeCoに加入している場合はその掛金と合算した上での上限となります。
掛金額は加入時の年齢や性別、選択した給付のタイプにより決まってきます。
メリット
- 掛金が全額所得控除
- 毎年支払いを受けられる
- 少ない掛金から始められ、加入後に掛金を増やせる
国民年金基金は掛金がすべて所得控除の対象になるので節税効果があります。
また終身年金なので死ぬまで毎年年金を受け取れます。
少ない掛金から始めることができるので、個々人の状況に合わせて掛金額を決めることも可能。
掛金は加入後に増やせたり減らしたりできるので、支払い過ぎて負担だと思ったら減らすことができます。
デメリット
- 加入すると自己都合でやめられない
- インフレに弱い
国民年金基金は一旦加入すると、基本的に自己都合でやめられません。ただし、加入後に掛金は減らせるため自由に負担を減らせます。
また付加年金と同じで受取額が確定していますが、将来インフレになった場合はお金の価値が下がってしまうこともあります。
どのくらい年金が増えるの?
例えばフリーランスで、
- 年齢が28歳(平成4年3月21日)
- 掛け金払込期間32年
- 課税所得が100万円
- 終身年金のA型を選択
上の場合では、月額の掛け金が11,060円、年間の掛金額が112,673円なら、所得税と住民税は20,047円軽減することができ、毎月の年金額は240,000円増えます。
総掛金額は112,673円×32(年)=3,605,536円で、
240,000円(毎月増える年金額)×15年=3,600,000円
となるため、15年支給し続ければ元を取ることが可能です。
掛金額は加入時の年齢や性別、選択した給付のタイプにより決まるため、受け取れる額は個人差があります。
年金の増やし方③ iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)は掛金額を自分で積立て金融商品を運用するものです。
60歳以降に受け取れます。毎月の積立金と運用する金融商品などを自分自身で選ぶことが可能です。
フリーランスの場合は、毎月5,000円から6万8,000円まで1,000円単位で積立金額を選べます。
先ほども説明しましたが上限額の6万8,000円はiDeCoと合算した額になります。
メリット
- 掛金額が全額所得控除
- 運用益が非課税
- 受け取った金額も控除の対象になる
iDeCoも国民年金基金と同様に掛金が全額控除になります。なので確定申告時に所得から差し引くことが可能。
また金融商品を購入すると利益に対して20.315%の税金がかかりますが、iDeCoの場合は運用期間中の運用益は非課税になります。
満期になり受け取った金額も控除対象になります。
一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金形式で受け取る場合は「公的年金控除」といった控除の対象になります。
デメリット
- 運用リスクは加入者本人が負う
- 加入時と月額で手数料がかかる
- 口座管理手数料が発生する
iDeCoは金融商品の一種であるので、運用リスクは加入者本人が負わなければなりません。運用の実績で将来の給付額が左右されることになります。
また加入時や月額で手数料がかかります。そして取扱金融機関によっては口座手数料も発生してしまうことも。
どのくらい年金がもらえるの?

28歳から60歳まで毎月10,000円を積み立てて運用益が年利3%だとすると、運用益が2,594,278円、節税効果が518,856円という結果になりました。
積立掛金が3,840,000円で、満期になって受け取れる合計金額は6,434,278円となります。
年金の増やし方④ 小規模企業共済
個人事業主が廃業をしてしまったなどの場合に積立ができる共済制度「小規模企業共済」もフリーランスにおすすめです。
メリット
- 毎月の掛け金額を少額から設定できる
- 掛金が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になる
小規模企業共済では、1,000円から70,000円まで500円ずつ掛け金額を設定することができます。掛金額や加入期間に応じて共済金額が受け取れます。
そして掛金額が、全て小規模企業共済等掛金控除の対象になるので節税の対策にもなります。
デメリット
- 20年以上加入しないと元本割れの可能性も
小規模企業共済はフリーランスでも退職金のように老後の備えができる制度ですが、20年以上加入していないと元本割れを起こしてしまうことがあるので注意です。
短期ではなく長期に積み立てることを意識して活用するようにしましょう。
年金の増やし方⑤ 経営セーフティ共済
経営セーフティ共済とは、取引先が倒産してしまうなどの緊急事態に資金を借りられる制度です。
掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借り入れることができて、掛金は損金または必要経費に算入することができる税制優遇も受けられます。
小規模企業共済と確定拠出年金、国民年金などは自分が一定の年齢になるまでは受け取ることができません。ただ経営セーフティ共済は40カ月納めていれば全額を戻すことができます。
なので以下のような使い方が可能です。
- 事業で利益が出た場合は、掛金を少なくてして税金を少なくする
- 事業で損失が出た場合は、解約して資金を戻す
解約して戻ってきた資金は利益扱いになるので、そこには税金がかかります。
掛金額は5,000円~20,000円まで自由に選ぶことができて、増額と減額が可能です。
なので月額20万円払っていた場合は20万円×12=240万円。240万円を経費にすることができます。
年金の増やし方⑥ 民間企業の個人年金保険に加入する
個人年金保険は、国民年金と厚生年金などの公的年金を上乗せする私的年金の1つです。
契約時に定めた年齢(60歳、65歳など)から、一定期間(5年、10年)もしくは生涯にわたって毎年一定額の年金が受け取れる貯蓄型の保険となります。
- 公的年金では生活費が足りない
- 退職から年金が支給されるまでの期間の生活費が欲しい
という人におすすめできる保険です。
ただ企業ごとに審査基準が異なります。多くの会社が審査を行ってその保険を引き受けるかどうかが判断されます。審査には健康診断の結果を提出するなどが必要です。
また被保険者が年金受け取り開始前に亡くなってしまった場合は、払い込み済みの保険料相当額の死亡保険金が遺族に支払われます。
年金受け取り期間中に亡くなってしまった場合は確定年金、保障期間付年金などで保証された期間は遺族に年金が支払われます。
おわりに
今回は、フリーランスの国民年金の仕組みと将来貰える年金を増やす方法について説明しました。
フリーランスの場合、何もしないと将来受け取れる年金はギリギリになるのが現状です。
年金を増やすためには、国民年金基金やiDeCoを活用し将来の資産形成をしていきましょう。
