フリーランスと聞くと、自由な働き方にばかり目が行ってしまい、どれくらいの年収を得ているかまでは具体的にイメージできないのではないでしょうか?
もちろん、働き方について理解するのも大切ですが、収入やそれに伴うリスクもしっかり把握しておくべきです。
この記事では、フリーランスの年収に関するデータをもとに、会社員時代と比べてどう変わるのか、どんなリスクがあるのかなどを解説していきます。
フリーランスにおける年収とは?
フリーランスは仕事単位で報酬を得ます。
そのため、給与明細や源泉徴収票で金額を確認できる会社員とは違い、フリーランスの年収は自分で算出しなくては把握できません。
フリーランスにとっての年収は、以下の公式に当てはめて計算できます。
売上(単価✕仕事数)-経費=収益(利益)
仕事内容によって単価は異なるでしょうから、売上はクライアント単位・プロジェクト単位で分けて計算し、最後にそのすべてを足して算出しましょう。
仕事をするうえでかかった経費を売上から引くことで、手元に残る収益が出せます。
会社員時代と同等の生活ができる目標年収とは?
会社を辞めてフリーランスとしてやっていくなら、最低でも会社員時代と同程度の生活水準を保ちたいもの。
しかし、フリーランスになると会社員の特典(保険料の半額負担・有給・傷病手当金など)がなくなるので、会社員時代の給料と同じ額を稼ぐだけでは足りません。
その特典分を補ったうえでこれまで通りの生活を送るには、会社員時代の手取り給与の1.5倍は稼く必要があるとも言われています。
会社員時代の手取り年収が300万円だったのなら、フリーランスとして450万円稼いでやっと同等レベル、ということです。
目標年収を稼げる時給はどれくらい?
年収ベースで考えていると、金額が大きいのでいまいちピンとこない人もいるでしょう。
もっと自分の身近な数字に落とし込むには、年収をさらに細分化して時給に換算する必要があります。
以下の表に3つの年収のパターンで計算してみましたので、参考にしてみてください。
なお、フリーランスとしての稼働時間は、「月20日、1日8時間→合計160時間」と仮定して計算しました。
会社員 時代の 手取り年収 |
フリーランス としての 目標年収 |
目標年収を 稼げる時給 |
200万円 | 300万円 | 約1,600円 |
300万円 | 450万円 | 約2,300円 |
400万円 | 600万円 | 約3,100円 |
こうして時給換算してみると、かなりの高時給で稼ぐ必要があることがわかりますね!
フリーランスの年収はどれくらい?
ここまでは「目標」の年収を紹介してきましたが、実際のところ、フリーランスはどのくらいの年収を得ているのでしょうか?
クラウドソーシングサイト「ランサーズ」による「フリーランス実態調査2018年版」を参考に、フリーランスの年収に関するデータを紹介していきます。
フリーランスと会社員の年収を比較
フリーランスにも「副業」「複業」などさまざまな形態がありますが、まずはフリーランス全体の平均値をみていきます。
ランサーズによる実態調査によると、フリーランスとして得た年収の平均は186万円で、個人収入に占めるフリーランス収入の割合は49%と出ています。
つまり、個人収入の内訳は、フリーランス収入とそれ以外の働き方(正社員・アルバイト・パートなど)で得た収入が半々ということです。
それを加味して計算すると、フリーランス活動をしている人の総合的な個人年収は380万円ほどになります。
国税庁の調査によると、会社員の平均年収は約441万円ということですから、フリーランスの方が平均年収は低いという結果が出ました。
フリーランスの形態別に年収を比較
ランサーズの調査では、フリーランスの形態を以下の4つに分類しています。
- 副業すきまワーカー…常時雇用されているが、副業としてフリーランスの仕事もこなす
- 複業系パラレルワーカー…雇用形態に関係なく、2社以上の企業と契約ベースで仕事を受ける
- 自由業系フリーワーカー…特定の勤務先はないが、独立したプロフェッショナル
- 自営業系独立オーナー…個人事業主・法人経営者で、1人で経営をしている
それぞれでフリーランス収入も個人収入に占める割合も異なるので、以下の比較表を参考にしてみてください。
種類 | フリーランス 収入 |
フリー収入が 個人収入に 占める割合 |
個人収入 |
副業 すきまワーカー |
平均74万円 | 平均17% | 平均435万円 |
複業系 パラレルワーカー |
平均154万円 | 平均36% | 平均428万円 |
自由業系 フリーワーカー |
平均157万円 | 平均60% | 平均262万円 |
自営業系 独立オーナー |
平均356万円 | 平均81% | 平均440万円 |
こうしてみると、「会社員の平均年収441万円にギリギリ肩を並べる程度」といった感じですね。
フリーランスの年収は青天井

前項で、フリーランスの収入に関して暗いデータを見てしまいましたが、フリーランスにまったく希望がないわけではありません。
フリーランスには会社員のような「社内規定に則った給与・昇給」というものがないため、彼らの収入には大きなの伸びしろがあるのです。
そのため、フリーランスの中にはスキルや経験をいかして収入を上げ、会社員の何倍もの収入を得ている人もいます。
フリーランスのリスク

「フリーランスはスキルや経験をいかせば稼げる」と述べた直後に水を差すようですが、フリーランスという働き方にはいくつかのリスクがあります。
リスクを承知していないと、「こんなハズじゃなかった!」と精神的に追い詰められるハメになるので、ここからの内容はしっかり読んでおいてください。
収入が不安定
ここまでにも何度か触れてきましたが、フリーランスは仕事単位で報酬を受け取るので、収入はこなした仕事の数に左右されます。
毎月口座に振り込まれる会社員の給料のような安定感は、まったくありません。
そして、仕事の依頼がなくなったり、体調を崩して仕事ができなくなったりしたら、その瞬間に無収入となります。
フリーランスには有給も傷病手当金もないので、貯金を切り崩すなど、自分自身でお金を工面する必要があるのです。
必要経費は自己負担
フリーランスの年収は
売上(単価✕仕事数)-経費=収益(収入)
として計算できます。
経費とは「仕事をするうえで必要な費用(コスト)」のことで、フリーランスは自分で負担しなくてはなりません。
たとえば、以下のようなものが経費にあたります。
- 事務所の家賃
- 仕事関係の人との交際費
- 筆記用具やホワイトボードなどの事務用品代
- 仕事用のパソコンやタブレット端末(10万円未満)
- 仕事に関する交通費や宿泊費
納税額は収入(収益)を基準にして算定されるので、経費が多くなればなるほど節税につながります。
とはいえ、経費そのものは自分で支払わなければならないので、「納税額を抑えられるから」と経費をやみくもに増やすのはおすすめできません。
そんなことをしても収入を減らすだけですし、場合によっては計上したものが経費として認められず、節税対策にすらならない可能性もあるのです。
保険料・税金などの支払い
フリーランスになると、保険料や税金に関する手続きや支払いも自分でやらなくてはなりません。
会社員時代は
- 健康保険や年金などの保険料や、住民税・所得税は給料から天引される
- 年末調整用の書類を記入するだけで、払いすぎていた所得税が還付される
という風に、支払いや手続きといった面倒な部分を、会社が代わりにやってくれていました。
これらの内容がそのまま自分のところにくるので、かなりの負担です。
特に、自分の収支を報告する「確定申告」は、売上やら経費やらを全部計算しなくてはならないので、日頃から領収書やレシートをしっかり管理しておく必要があります。
社会保険・厚生年金に加入できない

フリーランスになると、加入できる社会保険と年金が以下のように変わります。
- 会社の健康保険(社保)→国民健康保険(国保)
- 厚生年金→国民年金
それにより会社による半額負担がなくなるので、保険料は全額自己負担です。
年金に関しては、国民年金+厚生年金という二段構えから国民年金一本になってしまうため、将来もらえる年金額は少なくなるでしょう。
国民年金に上乗せする手段として「国民年金基金」「付加年金」などの制度があるので、早いうちから備えておくべきですね。
リスクに対する対処法
フリーランスにはいくつかのリスクがあると述べてきましたが、知識を持って備えていれば、もちろん対処可能です。
ここからは、先程挙げたフリーランスのリスクに対して、どう対処すればいいのかをひとつずつみていきます。
人脈を増やす
「収入が不安定」というリスクの対処ですが、仕事における人脈を増やし、仕事をもらうための間口を広げていくのが最善策です。
人脈を広げ、小さくても複数の収入源を持つことができれば、どれかが無くなったとしても、次の仕事を見つけるまで無収入という最悪の事態は避けられます。
もちろん、もらった仕事は全力で取り組み、クライアントからの信頼を得る努力をすることが必要です。
クライアントから信頼されれば、
- 長期継続案件の依頼
- 単価アップ
などのプラスアルファがつく可能性も高まります。
ただし、収入を安定させるために作業時間をどんどん増やすのは避けましょう。
最初のうちはそれでも良いでしょうが、それだけだといずれ頭打ちになるので、どこかのタイミングで人脈を増やす方にシフトした方が良いでしょう。
経費を定期的に見直す
経費に関するリスクに対しては、定期的な見直しが効果的な対処法です。
経費には、一回払ってしまえばおしまいのもの(流動費)と、定期的に払い続けなくてはならないもの(固定費)があり、後者の方は大きなリスクになりかねません。
定期的に払う固定費は、一度金額を下げられればその先も下がったままなので、コスト削減に結びつきやすいです。
たとえば、
- 会社用パソコンやタブレットの通信費
- 事務所の家賃
などはプランを見直したり、物件の管理会社に交渉したりできます。
家賃の方はハードルが高いかもしれませんが、通信費のプランは次々に新しいものが出るので、安くできるチャンスは十分あるでしょう。
納付や申告を仕組み化する
保険料や税金の支払いおよび手続きは、できる限り仕組み化した方が良いです。
保険料や税金の支払いは少しでも納付期限がすぎると、すぐにしかるべき場所から連絡がきます。
その連絡も無視して滞納を続けると、
- 督促料や延滞金が加算される
- 財産が差し押さえられる
- 年金や介護を受ける立場になったときに支障が出る
などのペナルティがつくので、忘れずに支払いたいですね。
そのための方法としては、「口座振替」がおすすめです。
最初に手続きする必要がありますが、それさえ済んでしまえば決まった日に口座から引き落とされていくので、払い忘れる心配はなくなります。
ただし、口座残高は把握しておくようにしましょう。
保険や年金について調べる

前項で、保険料や税金を滞納すると起こるペナルティについて触れましたが、これについて完全に理解している人はどれほどいるでしょうか?
会社員時代は給料からの天引きなので、保険や年金の仕組みや制度について、それほど意識する機会はなかったはずです。
しかし、セーフティネットの弱いフリーランスになると、否が応でも保険や年金に敏感にならざるを得ません。
万が一に備えられるよう、情報を集めて実行していく必要があります。
まずは以下のような方法を試してみてはいかがでしょうか?
- フリーランスが入れる保険を探して加入する
- 付加年金や国民年金基金を申し込む
毎月数百円で加入できる付加年金の詳細は、以下の記事を参考にしてみてください。
<<「付加年金」の記事はこちら
また、フリーランスが加入できる保険には、保険料が定額の「国民健康保険組合」や掛け金が全額控除の「小規模企業共済制度」などがあります。
加入条件や保障内容などはそれぞれ異なるので、いろいろ比較して自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
まとめ
現時点でのフリーランスの平均年収は、会社員とそう変わらないというのが現状です。
ただ、会社員のような優遇措置のないフリーランスは、将来のことも考えれば、会社員以上に稼ぐ必要があります。
フリーランスとしてやっていくのであれば、リスクをよく理解したうえで事前に対処し、常に自分のスキルや知識を高める努力をしていきましょう。
