会社員時代は加入が当然だった社会保険ですが、フリーランスの場合は加入できるもの、できないものが出てきます。
つまり、いざというときに保険未加入のため全額自己負担になる可能性もあるのです。
リスクを回避するには、フリーランスがどの社会保険に加入できるのかを知り、保障が足りないなら自分で備えておきましょう。
今回は、フリーランスの社会保険や、フリーランス向けのおすすめの保険や年金制度を紹介します!
社会保険の目的
20代で健康なフリーランスの場合、社会保険はあまり気にかけなくてもよいかもしれません。
しかし、長い人生においては、失業や収入が減少したり、病気、ケガなどで治療費がかかったりするリスクはありますよね。
その際に公的に支えてくれるのが社会保険です。
社会保険の種類は以下通りです。
- 健康保険・・入院、治療などに使う制度
- 年金保険・・老後の生活のために使う制度
- 介護保険・・介護時に使う制度
- 雇用保険・・失業・雇用継続の制度
- 労災保険・・従業員のケガや病気などで使う制度
このうち20代のフリーランスが加入義務のある社会保険は、健康保険と年金保険です。
まずは、それぞれの社会保険について順に説明をしていきます。
健康保険(公的医療保険)
健康保険とは、加入者が毎月一定の健康保険料を払うことで、医療給付や手当金によって不測の事態に備えるものです。
日本の健康保険制度は強制型の「国民皆保険制度」を採用しています。保険証1枚あればどの医療機関でも3割程度の自己負担で受診できる仕組みです。
会社員が加入する保険が「被用者保険」、フリーランスが加入する国民健康保険は「地域保険」に分類されます。
年金保険
年金保険は、20歳~満60歳になるまで保険料を支払うことで、老後や、病気とケガなどで働けなくなった後の生活を保障する社会保険制度です。
会社員の場合は国民年金と厚生年金の2階建てで手厚いですが、フリーランスは国民年金のみの加入となります。
そのため将来の年金額に不安を感じ、「付加年金」や「国民年金基金」など、上乗せできる私的年金に加入する人も多いです。私的年金については後述します!
介護保険
介護保険は高齢者の介護負担を社会全体で支えるための制度で、支払うことで、自己負担額を1~3割に抑えられます。
介護保険料は原則40歳以上の人は必ず加入しなければならず、定年退職して収入が途絶えた人でも支払い義務があります。
40歳以上〜65歳未満のフリーランスの場合は国民健康保険と一緒に支払います。
雇用保険
雇用保険とは雇用されている人を守るための失業保険制度で、中でも「失業保険」が知られています。
会社を辞めた際に失業保険の手続きを行うことで、次の就職先が見つかるまでの生活を保障してくれます。
雇用保険は正社員だけでなく、条件を満たせばパート・アルバイトでも加入義務があります。
労災保険
労災保険も雇用保険と同じく雇用されている人を守る保険制度です。
仕事中や通勤途中で従業員がケガ、病気、死亡したときに、従業員やその遺族に対して、働いて受け取れたはずの給与の一部の代替として、給付金が支給されます。
フリーランスと会社員の社会保険を比較
5つの社会保険は、会社に直接雇用されている人(社員・パート・アルバイトなど)とフリーランスなどの自営業者では制度や仕組みが異なります。
そこで、フリーランスと会社員の社会保険の仕組みを比較してみました。
フリーランス | 会社員 | |
---|---|---|
健康保険 | ・世帯主に応じ保険料を決定 ・全額自己負担 ・納付書などで支払う |
・給料額に応じ保険料を決定 ・負担額は会社と折半 ・保険料は給料から天引き ・家族が加入できる |
年金保険 | ・国民年金 ・毎月一定額の支払い ・全額自己負担 ・納付書などで支払う |
・厚生年金 ・給料の額に応じ保険料を決定 ・負担額は会社と折半 ・保険料は給料から天引き |
介護保険 | ・国民健康保険料と一緒に支払う ・全額自己負担 ・65歳以上は年金から天引き |
・給料の額に応じ保険料が決定 ・負担額を会社と折半 ・保険料は給料から天引き |
雇用保険 | ・本人は加入できない | ・加入できる |
労災保険 | ・本人は加入できない | ・加入できる |
上記のように、両者は保険の納め方や保険料などが大きく異なります。
会社員の場合、社会保険は給料から天引きされるため、言わば強制的に納付する形ですが、フリーランスは自分で支払う必要があり、うっかり滞納してしまうことも。
もし公的な社会保険料を滞納し続けた場合、財産の差し押さえや保険証の没収、給付の停止が行われる可能性もあります。
会社員からフリーランスに転向した人は、社会保険の制度が大きく変わることをしっかり覚えておきましょう。
フリーランスが加入できる社会保険
前項でもふれましたが、フリーランスでは加入できる社会保険と加入できない社会保険、切り替え手続きが必要な保険があります。
この章ではこれらについてまとめて紹介していきます。
強制的に加入する社会保険
強制的に加入しなければならないものは、国民健康保険と国民年金です。
国民健康保険
国民健康保険は市区町村が運営している公的医療保険です。
保険料は前年の所得や世帯人数、加入者の年齢、固定資産税で計算されますが、市区町村によって算出方法と金額が異なります。
例年6月頃に自治体から納付書が届き、9回〜10回に分けて支払っていく仕組みです。
会社員を退職してフリーランスになったら、健康保険から脱退し、退職日の翌日から14日以内に国民健康保険へ切り替え手続きを行いましょう。
また、国民健康保険だけではなく、国民健康保険組合、健康保険の任意継続といった健康保険に入る選択肢もあります。
以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてみて下さい。

国民年金
国民年金とは20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金制度で、収入に関わらず一律の保険料です。
令和2年度では月額16,540円を納付しますが、毎年見直しが行われているので注意してください。例年4月初旬に日本年金機構から納付書が届きます。
会社員からフリーランスになった場合、健康保険と同じく厚生年金も脱退し、厚生年金保険から国民年金に切り替えます。
退職日から14日以内が期限となるので、国民健康保険と同時に切り替え手続きするのがおすすめです。
国民年金は、確定申告で「社会保険料控除」を申請することで、年間で20万円程度を控除できます。節税を考えるフリーランスは覚えておきましょう。
フリーランスの年金に関してもっと詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてみて下さい。

介護保険は40歳以上から加入
会社員と一緒で、フリーランスも40歳以上になったら介護保険に加入することになります。
そのため、40歳を過ぎると保険料が上がって驚くフリーランスもいるかもしれません。
納付は国民健康保険料と一緒に支払うことになっています。
労災保険・雇用保険は加入できない
労災保険と雇用保険は雇用されている人を守るための保険制度です。
そのため、雇用されていないフリーランスは労災保険と雇用保険を受けることができません。
また、雇用保険である「失業保険」は、フリーランスで開業している場合は申請できないので注意してください。
労災保険は一部例外も
ただ労災保険では、個人で運送業や土木、建築業などを行う特定の業種の人は労災保険に特別加入できます。
業務の実態や災害の発生状況から、保護するのがふさわしいと見なされる業種が、特定の業種の共通点です。
詳しくは厚生労働省のこちらのページから確認してください。
人を雇うフリーランスは社会保険の加入が必要
5人以上の従業員を雇用していて、なおかつ法定16業種に該当する個人事業主(フリーランス)は、社会保険に加入しなけらばなりません。
法定16種は以下の通りです。
- 物の製造、加工、選別、包装、修理または解体の事業
- 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体またはその準備の事業
- 鉱物の採掘または採取の事業
- 電気又は動力の発生、伝導または供給の事業
- 貨物または旅客の運送の事業
- 貨物積みおろしの事業
- 焼却、清掃またはと殺の事業
- 物の販売または配給の事業
- 金融または保険の事業
- 物の保管または賃貸の事業
- 媒介周旋の事業
- 集金、案内または広告の事業
- 教育、研究または調査の事業
- 疾病の治療、助産その他医療の事業
- 通信または報道の事業
- 社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護
フリーランスが将来に備えるための保険や制度
これまでフリーランスの社会保険を解説しましたが、フリーランスは自分でリスクにしっかり備える必要があると分かったと思います。そこで、
「もっと将来に備えるための保険が欲しい」
「国民年金や国民健康保険では保障が足りない」
と感たときに利用してほしい、おすすめの保険や制度について紹介していきます。
国民年金基金
国民年金基金は、厚生年金のように国民年金に上乗せできる自営業の人のための私的年金制度です。
- 全額所得控除でき所得税や住民税が軽減される
- あらかじめ年金額が確定しているので資産計画しやすい
- ライフサイクルに応じて掛金額を変えられる
- 生存している限り年金支給が続く終身型
所得控除で税制面でのメリットが大きい。節税しながら年金を増やせる!
自由度が高くライフタイルの変化に合わせて掛け金を増減できるので、収入が一定でないフリーランスにおすすめです。
ただし、任意の脱退やお金の引き出しができないこと、受け取れる年金額が決まっているため、インフレに対応できないことはデメリットと言えます。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCoは自分で金融商品を選び資産形成できる私的年金制度です。
- 全額所得控除で節税できる
- 運用期間中の運用益は非課税
- 受け取る際に税負担を軽減する仕組みがある
- 商品数が10~30程度で選びやすい
- 月々5,000円の少額から1,000円単位で自由に設定できる
- 付加年金と併用できる
掛金、満期で受け取った分、運用益の3つで節税効果がある!
節税効果も高く投資初心者でも無理なく始められるのでメリットは大きいですが、積み立てた資産は原則60歳まで引き出せないことを覚えておきましょう。
付加年金
付加年金は公的年金の一つで、国民年金に上乗せして保険料を納められる制度です。
- 掛金額の全額が所得控除の対象になる
- 2年継続すれば元が取れる
- 毎年決まった額がもらえる
- iDeCoと併用できる
月額400円で将来の年金額を200円ずつ増やせる!
付加年金は受け取れる額は少ないですが、掛金が少ない分、フリーランスでも始めやすい年金制度です。
つみたてNISA
つみたてNISAとは「少額投資非課税制度」のことで、初心者でも少額でコツコツと資産形成ができます。
- 積み立て額は年間40万円までと少額
- 運用期間は20年と長期でこつこつ運用できる
- 投資で得た収益は最長で20年間非課税
- iDeCoと違いいつでも売却して現金化できる
- 金融庁が厳選した低コスト・低リスクの金融商品から選べる
毎月100円から積み立てられるので初心者でも始めやすい!
つみたてNISAで売却して得た利益と配当金に対しては課税されません。税金がかからない分、効率的に資産が貯められますね。
ただし、投資という性質上、元本割れの可能性があることは覚えておきましょう。
FREENANCE(フリーナンス)
フリーナンスはGMOが運営するフリーランスのための保険です。
収納代行口座サービス、無料の損害賠償保険、ファクタリングサービスがセットになっています。
- アカウント開設で損害補償保険「あんしん補償」が無料付帯
- 手数料3~10%で請求書を買い取って代金を即日振り込んでくれる
- フリーナンス専用口座が開ける
- 平日の毎日、振替が可能(GMOあおぞらネット銀行が対象)
フリーナンスでは自己負担無料で「あんしん補償」という損害補償が受けられます。
あんしん補償とは、業務遂行中の事故や、情報漏洩や著作権の侵害などのリスクに備えるサービスです。
- 業務に使用するパソコンがウイルスに感染した
- 第三者から損害賠償を受けた
- 納期に間に合わず発注者から損害賠償請求を受けた
などの万が一のリスクに備えることができます。
フリーナンスは登録料・口座維持費用が一切かからないので負担が増えません。もっと補償や安心が欲しいフリーランスなら会員登録だけでもしておくと安心ですよ。
フリーナンスについて詳しく知りたい人は、以下の記事もおすすめです。

教育訓練給付金
「教育訓練」とは専門技能を取得するための講座を受講できる制度です。条件を満たせば支払った受講費用の一部が給付で戻ってきます。
- 教育訓練に支払った受講費用の一部を国が負担
- 元給与所得者のフリーランスも支給の対象
- 失業保険との併用が可能
- 多種多様な講座が対象(通信講座もあり)
教育訓練に支払った受講費用は国が最大70%支給。スキルアップが目指せる!
教育訓練給付は2種類あり取得できる資格は異なります。
- 一般教育訓練給付金(WEB制作や宅建、英会話など一般的な通信教育)
- 専門実践教育訓練給付金(看護師や介護福祉士、普通免許や大型免許など)
専門実践教育訓練給付金の方が専門的・実践的な訓練なので、給付金の額は大きいです。
受給のためには「雇用保険の被保険者期間が3年以上」など条件が決まっているので、事前に確認しておきましょう!
フリーランスが将来のリスクに備えるための保険は他にもあります。以下の記事でおすすめの保険を紹介しているので、ぜひチェックしてくださいね。

まとめ
ということで今回はフリーランスが加入する社会保険について説明してきました。
フリーランスの場合、雇用保険や労災保険など加入できない社会保険があったり、国民年金や国民健康保険ではすべて自己負担になったりなど注意点は多いです。
もし備えが足りないと感じた場合は、任意加入できる保険で上乗せすることを検討しましょう。控除などを利用し賢く節約しながら備えてください。
