病気やケガで治療を受ける際に必要になるのが健康保険です。
会社員ならば会社の健康保険に強制的に入ることになっていますが、フリーランスの場合は自分で健康保険を選び加入する必要があります。
そこで今回は、フリーランスが加入できる健康保険の種類と、フリーランス特有のリスクに備えるための民間保険も紹介していきます。
フリーランスは保険手続きを忘れずに
日本では「国民皆保険制度」を設けています。国民は必ず公的医療保険に加入する義務があり、これにより病院で支払う医療費は3割の負担のみで済んでいます。
会社員からフリーランスとして独立したら、健康保険を脱退して国民健康保険に切り替える手続きをしなくてはなりません。
平成30年4月以降は市区町村から都道府県が運営の主体となりましたが、手続きは市区町村の役所窓口でできます。
ちなみに、健康保険の切り替えと同時に、厚生年金から国民年金の切り替えもやっておくと手間がはぶけますよ。
フリーランスには国民年金にプラスできる年金制度もあるので、そちらも余裕があれば確認しておくと良いでしょう。
年金については以下の記事に詳しくまとめています。

フリーランスが加入できる健康保険とは
前項で「国民健康保険」について簡単にふれましたが、フリーランスが健康保険に加入する方法は他にもあります。
- 自治体の国民健康保険(国保)
- 国民健康保険組合(国保組合)
- 会社の健康保険の任意継続
- 家族の健康保険の扶養に入る
どの健康保険でも自動的に移行するわけではないので、自分で手続きが必要です。
それぞれの保険の特徴を順に説明をしていきます。
自治体の国民健康保険(国保)
通称「国保」と呼ばれるのが自治体が運営する国民健康保険です。医療分、支援分、介護分という3つの区分があり、39歳までは医療分と支援分のみを納めます。
毎年6月中旬ごろに納付書が届き、1年分を9〜10回に分けて納付していく仕組みで、クレジットカードやコンビニなどで支払えます。(自治体より違いがあります)
保険料
国保の保険料は毎年変わることが特徴です。
前年の所得、世帯人数、加入者の年齢、固定資産税で計算されますが、市区町村により算出方法と金額が異なります。
対象となる人
自営業者、農業者、会社を退職した人、無職者など。当然会社を退職したフリーランスも対象になります。
加入方法
退職日の翌日から14日以内に市区町村役場で加入手続きを行いましょう。
必要書類
- 健康保険資格喪失証明証、退職証明書、離職票、雇用保険受給者資格証のいずれか一つ(被扶養者は資格喪失証明書のみ)
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)
- 世帯主の個人番号がわかるもの(マイナンバーカード、通知カードなど)
国民健康保険組合(国保組合)
同じ種類の職業についている人を組合員とするのが国民健康保険組合です。「国保組合」とも呼ばれています。
例えば、以下のようにクリエーター、エンジニア、医師、士業、美容師など様々な業種の組合があります。
- 文芸美術国民健康保険組合(文芸・美術、著作活動に携わる人向け)
- 全国ソフトウェア協同組合連合会(エンジニア向け)
- 全日本理美容健康保険組合(美容師向け)
- 東京食品販売国民健康保険組合(食品製造などに携わる人向け)
- 全国歯科医師国民健康保険組合(歯科医師向け)
保険料
国保組合は保険料が変わらない「固定料金制」が多く、所得によって保険料が変わる国保よりも保険料が安く済む可能性があるでしょう。
例えば、文芸美術国民健康保険の保険料は1万9600円で固定です。(2020年5月現在/20代の単身の場合)
この保険料に加えて、所属する団体の会費や入会金などが別途必要になります。
国保と国保組合は比較してより安い方を選びましょう!
対象となる人
組合の事業に対応している個人事業主やフリーランスが対象です。
例えば文芸美術国民健康保険組合では、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、イラストレーター、コピーライター、カメラマンなどが該当します。
加入方法
運営している組合まで必要書類を揃えて出向きましょう。オンライン窓口に対応していない組合もあるので注意です。
各国保組合に加入する場合は、それぞれを構成する団体などへの加入も条件となっている場合があります。
必要書類
- 加入申し込み書
- 国民健康保険組合に加入している団体の会員証(組合による)
- 世帯全体の住民票
- 所得税の確定申告書Bの控え
- 仕事の証明(作品のコピーなど)
- 市区町村の国民健康保険の未加入期間がないのことの証明
会社の健康保険の任意継続
会社員や公務員が加入する公的な医療保険は、退職した人でも今までと同じ給付内容で最長2年間任意継続することができます。
一定の条件を満たせば扶養家族の保険料を負担しなくても済むので、扶養家族がいるなら任意継続はおすすめです。
注意しておきたいのが以下のポイントです。
- 滞納に対して厳しく1日でも支払いが遅れてしまうと脱退させられる
- 保険料は会社と折半ではなく全額自己負担になる
これらのポイントを抑えてから任意継続をするかどうかを判断しましょう。
保険料
保険料は退職時の標準報酬月額によって決まりますが、最高限度額があり、標準報酬月額が30万円以上だった場合は通常より保険料が割安になります。(平成31年3月分までは28万円)
会社員からフリーランスに転向する人は、加入中の健康保険で自分の標準報酬月額がいくらかを確認しましょう!
対象となる人
退職日までに2カ月以上継続して社会保険に加入している人。
加入方法
退職日の翌日から20日内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を住まいの住所地を管轄する協会けんぽ支部に提出します。
健康保険組合に加入していた場合は健康保険組合で手続きをしましょう。
任意継続被保険者資格取得申出書は協会けんぽのホームページからダウンロードできます。ダウンロードはこちら
必要書類
- 任意継続被保険者資格取得申出書
家族の扶養に入る
家族が会社員などで健康保険に加入していれば、その扶養に入ることで保険料を負担しなくてもよくなります。
ただし、家族なら誰でも入れるわけでなく、「収入見込みが年間収入130万円未満」などの規程をすべて満たすことが条件です。
初年度のフリーランスは売上がまだ見込めない方もいるので、上記の条件でも利用できる人もいるかと思います。(私も初年度のときは扶養内に入っていました)
保険料
扶養に入ると保険料はかかりません。被保険者である家族はこれまでと変わらない保険料(1人分)のみです。
対象となる人
家族が会社の健康保険に加入していて、収入見込みが年間130万円未満の人が対象です。
収入見込みが130万円未満なのに、扶養に入らず、自分で国民健康保険を払い続けていると損になります。扶養内に入れるかは一度確認をしてみて下さい。
加入方法
健康保険に加入している家族の勤務先に相談します。
必要書類
- 被扶養者(異動)届、国民年金第三号被保険者関係届
- 被保険者の住民票(被保険者が世帯主、被保険者と同一世帯である場合)もしくは被保険者の戸籍謄(抄)本(被保険者との続柄が分かるもの)
- 収入を証明するための書類(退職証明もしくは雇用保険被保険者離職票の写しなど)
フリーランスが健康保険料を安くする方法
フリーランスならできるだけ健康保険料を安したいですよね。ここからは以下の方法を説明していきます。
- 保険料の安い自治体を探す
- 国民健康保険組合に加入する
保険料の安い自治体を探す
国民健康保険料(国保)は自治体によって保険料が違うので、保険料が低い自治体に住むことで保険料の負担を軽くできます。
どのくらい地域ごとで保険料の差が出るか実際に計算していきましょう。
さいたま市、三郷市、小川町で保険料を比較
試算条件
- 埼玉県のさいたま市、三郷市、小川町を比較
- 28歳の単身者
- 総所得額250万円(収入から経費と控除額を引いた額)
まずは賦課基準額(総所得金額等から住民税の基礎控除の33万円を差し引いた金額)を使って、医療分を算出します。
- 250万(所得)−33万(基礎控除)=217万(賦課基準額)
医療分 | さいたま市 | 三郷市 | 小川町 | |
---|---|---|---|---|
所得割 | 率 | 7.51% | 6.90 % | 5.60% |
所得割 | 162.967円 | 149,730円 | 121,520円 | |
均等割 | 単価 | 29,500円 | 28,000円 | 23,600円 |
均等割 | 29,500円 | 28,000円 | 23,600円 | |
限度額 | 580,000円 | 540,000円 | 610,000円 | |
合計 | 192,467円 | 177,730円 | 145,120円 |
- 所得割とは 前年中の所得金額に応じて負担する金額
- 均等割とは 国民健康保険の加入者数に応じて計算(単身なので1人分)
※自治体によっては平等割、資産割、均等割もプラスされます。
「後期高齢者支援金等課税額分」も医療分と同じように計算し、両者を合計したものが国民健康保険料です。
計算の結果、3つの都市では小川町がもっとも安いことが分かりました。さいたま市とは年間35,000円ほど差があります。
都市名 | 保険料 |
さいたま市 | 243,984 |
三郷市 | 226,960円 |
小川町 | 208,030円 |
健康保険が安い自治体を知りたい場合は、いくつかの都市を比較して探していきましょう。
複雑な保険料を手っ取り早く知りたいときは、国民健康保険計算機などの簡易のシミュレーションサービスを利用すると便利ですよ。
国民健康保険組合に加入する
前項で説明したように、国保組合の国民健康保険組合に加入することで保険料が安くなる場合があります。
なぜなら、国民健康保険は前年の収入によって額が変わるのに比べて、国民健康保険組合は収入に関わらず保険料が一律だからです。
収入が高いため、国保で保険料が多く取られてしまうフリーランスは、国民健康保険組合も検討してみてください。
フリーランスのリスクに備えるおすすめの保険
ここまで健康保険を紹介してきましたが、フリーランスは医療を受けるための保険だけでなく、さまざまなリスクに備えられる保険も知っておく必要があります。
- 病気やケガで働けなくなるリスク
- 損害賠償請求のリスク
- 報酬が支払われないリスク
- 仕事がゼロになるリスク
- 老後資金が足りなくなるリスク
- 残された家族が生活に困るリスク
ここからは、これらのリスクに備えられるおすすめの民間保険を紹介します。
フリーランス協会の保険
2017年1月設立の「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」が運営している保険です。
フリーランス協会の保険の特徴
- 月額833円換算
- 損保ジャパンなど大手保険会社4社による賠償責任保険
- 大手企業も導入する福利厚生サービスあり
- ケガや病気による就業不能を補償
- 営業ツール機能など入会ベネフィット多数
- 報酬トラブルのための弁護士保険制度あり
協会に賛同し入会すれば(入会金1万円)、特典として保険が利用できます。
情報漏洩、著作権の侵害や納期遅延など、フリーランスにありがちなリスクをまるごとカバーしてくれるので、安心して業務を遂行できるのがメリットです。
福利厚生も健康診断・人間ドック、子育て両立サポートなど大手企業並みに充実。
その他、営業ツール機能や会計ソフト2ヶ月無料など、さまざまな入会ベネフィットがあるのも注目です。
フリーナンス
GMOが運営する運営するフリーランス向けの保険です。保険やファクタリングサービスがセットになっています。
フリーナンスの特徴
- アカウントの無料開設だけで損害賠償保険が付帯
- 利用料や振込手数料無料
- 手数料3%~10%で即日払い
- フリーナンス専用口座を無料開設
フリーナンスは無料会員登録のみで、自己負担無料の「あんしん補償」という損害賠償保険が受けられます。
- 業務遂行中の事故
- 仕事の結果の事故
- 情報漏洩
- 著作権侵害
など、フリーランス特有の損害をしっかり補償してくれるのが特徴です。
また、フリーナンス振込専用口座を使えば使うほど与信スコアがアップ。即日払いの手数料が下げられるなどメリットがあります。
フリーナンスを登録するには一定の審査がありますが、写真付き身分証明書の提示に問題なければ審査落ちは気にしなくていいでしょう。
無料で保険が付帯するので入会して損はないですよ!
フリーナンスの詳しい記事はこちらが参考になります。

JA共済 ライフロード
JA共済ライフロードは農業協同組合が運営している個人年金保険で、「老後の資金が足りない」という方におすすめです。
JA共済ライフロードの特徴
- 年金の増加が期待できる
- 個人年金保険料控除が受けられる
- 審査は必要なく簡単な告知で申し込める
- 柔軟な保障設計ができる
月々1万円、月々2万円など積立て感覚で備えられ、契約6年目以降は1年ごとに予定利率を見直す予定利率変動型を採用。
5年目の0.5%と6年前以降の0.75%の最低保証予定利率は確実に保証されています。
一度増加した年金額が減ることはないので、フリーランスも安心して年金を増やせるのではないでしょうか。
また、掛金額のすべてが所得控除の対象になるので節税効果があります(税制適格特約を付加している場合)。
パルシステム就業不能保険はたらく力
パルシステム就業不能保険はたらく力は、くらしと仕事をサポートする医療保険です。
パルシステム就業不能保険はたらく力の特徴
- 病気やけがで働けなくなったらお見舞金制度がある
- 職業による加入制限なし
- 退院後の自宅療養も保障対象
- 年間の保険料が7,700円〜
病気やけがで働けなくなったときに、直面する所得の減少と出費の増加を保障してくれる保険です。
- 主婦で病気やけがで入院。家事ができない
- ハイキング中の事故により骨盤を骨折した
- 切迫早産で入院した
など、不測の事態により働けなくなってしまったとき給付金が支払われます。
職業による加入制限がないので誰でも加入することができるので、フリーランスにもおすすめですよ。
おわりに
ということで今回はフリーランスの健康保険の種類、おすすめの民間保険について説明してきました。
フリーランスの健康保険は、
- 自治体が運営する国民健康保険が一般的
- 収入が高い人は国民健康保険組合の保険料が安い可能性あり
- 元会社員で扶養する家族がいるなら健康保険の任意継続
- 親が勤務先の社会保険に加入しているなら扶養に入る
といったように自分の状況に合わせて選ぶといいでしょう。
また、民間の保険で保障を強化することができるので、こちらも自分が抱えるリスクに合わせて加入を検討してください。
