フリーランスの事業開始を税務署に通知する「開業届」。
実は開業届を提出していなくても、フリーランスとして仕事はできるのですが、開業届を出すメリットはとても大きいです。
「なんだか手間がかかりそう…。」と提出を先延ばしにしていませんか?
そこで今回は、開業届を出すメリットやデメリット、記入の仕方と提出方法などを解説していきます。
開業届について知ってフリーランスの活動の幅を広げていきましょう!
開業届とは?フリーランスは提出すべき?
開業届とは「個人事業の開業・廃業等届書」が正式名称です。新しく事業を始める際、税務署にこの書類を提出すると開業したことになります。
所得税法上、事業を開始した日から1ヶ月以内が提出期限と決まっていますが、実際は提出義務も罰則もありません。
そのため開業届を出さないままのフリーランスも普通にいます。
ただし、節税メリットの多い青色申告を希望する場合、開業届の提出タイミングは考えておきましょう。
青色申告をするなら、「開業届」と「青色申告承認申請書」の提出が必要です。
青色申告承認申請書の提出期限は、
- 新たに開業した人→開業届の提出から2ヶ月以内
- 白色申告から青色申告に変える人→青色申告しようとする年の3月15日まで
と決まっています。
開業届はフリーランスにメリットいっぱい
提出義務はないものの、開業届を提出するとフリーランスにメリットがあります。メリットを最大限得るために、開業届は早めに考えておきましょう。
開業届を出すメリット
- 節税効果が高い青色申告ができる
- 屋号付口座を開設できる
- 保険や共済に加入できる
- 保育園の就労証明になる
- フリーランスとしての覚悟が決まる
これらについて順に説明をしていきます。
節税効果が高い青色申告ができる
開業届を出す最大のメリットは、節税効果が高い青色申告ができることです。
青色申告は大きな所得控除がある
青色申告は最大65万円の所得控除を受けられます。
ちなみに、白色申告は事前に手続きを行わなくていいメリットがあるものの、特別に差し引ける控除はありません。
青色申告は赤字を繰り越せる
青色申告では、赤字を翌3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」で節税効果を狙えます。
これによって繰り越した赤字分は、翌3年間の黒字分と相殺できるのです。
黒字が減った分課税所得も減り、結果的に税金を安くできます。
屋号付口座を開設できる
開業届を出せば、従来の個人名口座ではなく、屋号付口座を開設できるようになります。
これにより、フリーランスが事業を行う上での様々なメリットがあります。
- 取引先が事業内容を把握しやすい
- 取引先からの信頼を得やすい
- 事業のお金の出入りが管理しやすい
取引先が事業内容を把握しやすい
屋号付口座があると、取引先は事業内容をすぐ把握できます。
例えば「○○WEBデザイン」という屋号なら、「ここはWEBデザイン事業を営んでいる」と一目で分かるため、説明する手間も省けるでしょう。
取引先からの信頼を得やすい
取引する際に顧客側から見ると、
- 個人名の口座
- 屋号が入った事業用口座
上記のどちらが信用できるかといったら、事業用口座の方が信頼度が得やすいと言えます。
フリーランスに欠かせない「顧客からの信頼」が獲得できれば、再び仕事の依頼が来る可能性も高まるでしょう。
事業のお金の出入りが管理しやすい
プライベートと事業の収支が一緒になっていると、経費管理に膨大な時間を要します。
しかし、プライベートと別に屋号付口座があれば、事業に関わるお金の出入りが把握しやすくなり、確定申告の作業も短時間で終わるでしょう。
共済に加入できる
開業届を出すことで「小規模企業共済」に加盟できるようになります。
小規模共済とは、フリーランスが廃業をした場合などに、掛金がまとまって戻ってくる共済制度です。
小規模共済のメリットは以下が挙げられます。
- 毎月の掛け金額を少額から設定できる
- 掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になる
小規模企業共済では、1,000円〜70,000円まで500円刻みで掛け金額を設定できます。
掛けた金額はすべて控除対象になるので節税対策としても人気です。
保育園の就労証明になる
フリーランスの立場で子供を保育園に預けたい場合、開業届が公的な就労証明としても利用できます。
結婚後もフリーランスを続けたいと考えているなら、事前に開業届を提出しておいて損はありません。
フリーランスとしての覚悟が決まる
開業届は、「これから他の誰でもない、自分の事業を始めるんだ」という意思を形にした書類です。
提出することによってフリーランスとしての覚悟が決まることも、メリットの一つと言えるでしょう。
開業届のデメリットは?
開業届は、メリットだけでなくデメリットもあるため注意が必要です。デメリットを把握した上で開業届の提出を判断しましょう。
- 青色申告の手間がかかる
- 税務署が事業を把握する
- 失業保険を受け取れない
これらのデメリットについて順に説明をしていきます。
青色申告の手間がかかる
確定申告には白色申告と青色申告がありますが、青色申告は会計・確定申告が面倒で慣れるまでは手間がかかってしまいます。
特に、青色申告のメリットである65万円控除を得るためには、複雑な複式簿記での記帳が必須です。
正式な簿記の原則に準じていない場合や、書類の不備がある場合は受け取りを却下される可能性もあります。
青色申告を効率化するため、会計freeeなどのクラウド会計ソフトを活用するフリーランスも多いです。
税務署が事業を把握する
フリーランスが開業届を出すと当然、税務署があなたの事業を把握します。
そのため、必要に応じて確定申告をしないと税務署から指摘が入る可能性があります。
もちろん、確定申告する・しないは課税対象の所得がいくらかによるので、開業届の提出によってチェックが厳しくなるのではありません。
失業保険を受け取れない
失業保険とは、退職した場合などに失業手当を受け取れる制度です。
しかし、開業届を出しているフリーランスは失業保険を受け取れないと言われています。
理由は、失業保険を受け取る条件に「本人に再就職する意思と能力があること」とされているからです。
開業届を出すことで、「すでに働いている」ことになり、再就職の意思はないと判断されてしまいます。
もし、元会社員で開業届をまだ出していないならば、
- 再就職手当を狙う
- 失業保険を満額受け取ってから改めて開業届を出す
などの方法もあります。
【経験談】フリーランスが開業届を出してみた
ここでは、フリーランスのWEBライター2年目である私が、開業届を出した経験談を以下のポイントにそってお伝えしたいと思います。
- 開業届のタイミング
- 屋号の決め方
- 提出して気づいたこと
開業届のタイミング
私が開業届を出したのは3月15日(白色申告を青色申告に変更する期限日)、出した場所は管轄の税務署です。
開業届を出そうと思った理由は、やはり青色申告の65万円控除を受けたいからです。
初めての確定申告の際、「控除を受けられたら、還付金が戻ってくるのになぁ」と感じ、調べてみたのです。
青色申告を利用すれば大きな控除を受けられると知り、開業届と青色申告の承認手続きを同時に行いました。
皆さんも開業届を出すのなら、青色申告承認手続きも一緒に行ってしまうのがおすすめです。
また、私のようにギリギリではなく余裕を持って提出するのをおすすめします!
屋号の決め方
屋号については、私は適当にそのまま決めてしまいました。
屋号は後から変更できるので、とりあえず仮の屋号を記入しておいて、正式名称が決まったら変更するのも手です。
屋号が決められなくて開業届が出せない人は、開業届を提出してしまいましょう。
屋号の決め方のコツは、一瞬で自分の職業が分かるようにすることです。クラウドソーシングなどで幅広く募集し厳選して決める手もありますね。
提出して気づいたこと
「開業届は意外と簡単に申請できた」というのが率直な感想でした。
また、開業届を正式な機関に認められたことで、自分も自営業者の一人なんだなあとモチベーションが上がりました。
開業届の作成と提出
では、ここからは開業届の作成方法と提出の仕方について説明していきます。
開業届の作成方法
開業届の作成は以下の方法があります。
- 様式を国税庁ホームページからダウンロードする
- 管轄の税務署に行って記入する
- オンラインで作成する
前もって記入したい場合は、国税庁のホームページから書類をダウンロードしましょう。
パソコンから直接入力後にプリントアウトできるので便利です。
税務署に行く方法は、税務署職員が書き方を教えてくれるメリットがあります。
オンラインでも簡単に開業届が作成できる!
開業届はオンラインでも簡単に作成できます。オンラインでの作成におすすめなのは「開業freee」です。
開業freeeのメリット
- 簡単な質問に答えるだけで自動作成できる
- 控えも含めた書類がPDFに出力される
- 無料
- 青色申告の承認申請書も同時に作成できる
- 提出先の税務署を地図付きで案内してくる
開業freeeは、簡単な質問に答えるだけで自動的に開業届を作成できるのが特徴です。
税務署への宛名までプリントできるので、切り取って封筒に貼りつければ、簡単に郵送できます。
オンラインで開業届を作成するならぜひ開業freeeを活用しましょう。
開業届の提出先と提出方法
開業届の提出先は、原則自宅住所のある所轄税務署になります。
管轄の税務署がどこか分からない人は、国税庁のウェブサイトから検索してみましょう。
提出方法は以下の通りです。
- 税務署窓口に直接提出する
- 税務署に郵送する
- 税務署の時間外収受箱に投函する
①税務署窓口に直接提出する
管轄の税務署で開業届を提出する場合、必要書類は以下の通りです。
- 印鑑
- マイナンバー通知カードなどマイナンバーが分かるもの
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
私の場合、書類に印鑑を押す箇所もあったのですが、母印で対応できました。
二度手間にならないよう受付時間も確認しておきましょう。土日祝日は閉庁していることが多いです。
②税務署に郵送する
平日が忙しい場合や、税務署が家から遠い場合は郵送で開業届を提出するのがおすすめです。
時間を気にせずポストに投函できるメリットがありますが、不備がないように書類に記入してください。
必要書類は次の通りです。
- マイナンバーカードが分かる書類
- 身分証明書の写し
- 控え用の返送用封筒と切手
これら一式を封筒に入れ、管轄税務署の住所宛に送付します。
③税務署の時間外収受箱に投函する
家の近くに税務署がある場合は、税務署の時間外収受箱(ポスト)を利用すると便利です。
これにより、税務署の窓口時間外にも開業届を提出できます。
必要書類は郵送時と同じです。
開業届と同時に出したほうがいい書類
開業届を提出すると決めたなら、「青色事業承認申請書」を一緒に提出するのがおすすめです。
この書類で青色申告が可能になり、最高65万円の所得控除が受けられます。
開業届同様に提出は必須ではないですが、節税効果を高めるために提出しておきましょう。
冒頭にもお伝えした通り、提出期限が決まっているので注意してください。
開業届の記入の仕方
提出方法などが分かったところで、開業届の書き方について説明していきます。
以下の表で、開業届の各項目についてざっくりまとめましたので参考にしてください。

1.上部のタイトル | 開業に○ |
2.税務署 | 納税地の所轄税務署 |
3.納税地 | 住んでいる住所 |
4.上記以外の住所地・事業所等 | 別の事業所がある場合に記入 |
5.氏名・生年月日 | 本名を記入 |
6.個人番号 | 自分のマイナンバーを記入 |
7.職業 | 該当するものを記入 |
8.屋号 | 決まっていれば記入 |
9.届出の区分 | 開業に○ |
10.所得の種類 | フリーランスは事業所得に○ |
11.開業日 | 開業した日(自由に決められる) |
12.事業所等を新増設〜 | 記入不要 |
13.開業・廃業に伴う〜 | 青色申告承認申請書を提出するなら○
課税事業者選択届出書は無に○ |
14.事業の概要 | 事業の内容を具体的に記載 |
15.給与等の支払の状況 | 無に○ |
16.源泉所得税の納期の特例 | 無に○ |
※家族に給与の支払い義務がないフリーランスの場合
職業欄の書き方
開業届の職業欄の記入に明確な決まりはありません。
ただし、記入した職業によっては業種が分類されて、それにより個人事業税の税率、課税、非課税が変動するので注意しましょう。
以下に職業別にいくつか例を紹介します。
- Webライターなら文筆業
- WEBデザイナーならデザイナー
- アフィリエイトブログならインターネット広告業、サイト運営
- エンジニアならシステムエンジニア
- WEB制作ならホームページ制作
難しい場合は、総務省の「日本標準職業分類」も参考にすると良いでしょう。
開業日の書き方
事業の稼働を開始した日が開業日になります。しかし、こちらも原則的に決まりはなく自由に決められます。
開業準備を始めた日でもOKです。
事業の概要の書き方
現在の活動内容の詳細を記載します。できるだけ具体的に書いてください。
どのような方法で収入を得ているのかがポイントです。
- インターネットウェブサイトの運営・構築
- WEBサイトのデザイン企画・制作・運営
- 軽食を中心とした飲食店の経営
給与等の支払い状況の書き方
開業したと同時に家族に給料を支払う場合はこの項目に記載します。
専従者とは、雇用している家族や子のことです。もし、直接雇用している家族や子がいればその人数を記入しましょう。
開業届のよくある疑問
ここからは開業届に関するよくある疑問をまとめてみました。参考にしてみて下さい。
開業届の提出はお金がかかるの?
開業届の提出は一切無料です。手数料や収入印紙代などもかかりません。
開業届を出すタイミングはいつが最適?
届けを出すタイミングは状況によって変わってきます。
開業日から1ヶ月以内
開業届の提出は事業開始から1ヶ月以内となっています。しかし、提出義務や罰則はないため、基本的にいつでも提出することができます。
もし開業日の前に収益が生じている場合でも、その年の事業所得としてきっちり確定申告をすれば問題ありません。
事業開始からかなり時間が経過して不安な場合は、一度税務署で相談してみましょう。
失業保険を貰いきった後
会社員からフリーに転身する人は、失業保険を全部貰いきった後に提出するのがおすすめです。
前半部分で説明したように、開業届を出していると、失業保険の「本人に再就職する意思と能力がある」の条件を満たさない可能性があります。
開業届を出したら確定申告は絶対必要?
確定申告が必要なのは、収入を得て課税所得がある人が対象になります。
そのため、開業届を出す・出さないは確定申告には関係ないです。
開業届を出したらやめられない?
開業届を提出後でも「廃業届」を出せば簡単に廃業できます。
開業届と同じ書類、「個人事業の開業届け出・廃業等届出書」で提出できます。
おわりに
ということで今回はフリーランスの開業届について書きました。
本記事で説明したようにフリーランスが開業届を出すメリットは多いです。
開業届の作成や提出は簡単にできるものの、失業保険を受け取れないなどのデメリットもあるので注意しましょう。
フリーランスのメリットを最大限にいかすためにも、開業届は早めの提出がおすすめです!
