フリーランスは会社員と違い、自分で毎年住民税を支払います。
そのため、フリーランスになったばかりの頃は、うっかり住民税の納期が過ぎて滞納したり、住民税が高すぎたりで戸惑う場合も。
そこで本記事では、
- フリーランスの住民税はいくらなのか
- どうやって払うのか
- 住民税の計算方法
- 住民税の節税方法
などを解説していきます。
フリーランスの住民税対策を知っておきたい方はぜひ読んでみてください。
フリーランスが納めるべき税金
住民税などフリーランスが納めなければならない税金は次の通りです。
- 住民税
- 所得税
- 個人事業税
- 消費税
- 固定資産税
このようにフリーランスが支払う税金は様々ですが、本記事は住民税について考察していきます。
住民税とは
住民税とは、都道府県や市区町村などの地方公共団体に支払う税金のことです。「県民税」や「市民税」とも呼ばれ、教育や福祉、行政サービスの資金のために徴収されています。
納税額は一律でなく、個人の収入や住んでいる地域によって変わります。
会社員は自動的に給料から徴収されているので馴染みがないかもしれませんが、フリーランスは、毎年6月頃に自宅に郵送された税額通知書を元に自分で支払います。
納付し忘れると、延滞金などのペナルティが課せられるので注意しましょう。
フリーランスと住民税:基礎知識
ここからは、住民税の内訳、納付先、徴収方法など住民税の基礎的な部分について解説をしていきます。
住民税の内訳:所得割 +均等割
住民税は以下の2つで構成されています。
- 所得割 所得に課せられる税額
- 均等割 所得の多い、少ないに関わらず定額の税額
それぞれの計算方法は後ほど解説していきます。
住民税の「所得割」の計算期間
住民税の所得割の計算期間は、1月〜12月までの1年間の所得をもとに計算されます。それが徴収されるのは翌年の6月以降です。
6月頃に「住民税決定通知書」という住民税の納税額を知らせる通知が届きます。
前年の所得をもとに計算されるので、退職してフリーランスになり、収入がなくなったとしても住民税は収めなければなりません。
住民税の徴収方法の違い
住民税は、普通徴収と特別徴収の2種類の徴収方法があります。どのように違うかまとめてみました。
普通徴収 | 特別徴収 | |
---|---|---|
対象となる人 | フリーランスなど | 会社員など |
支払う人 | 本人 | 会社が代わりに行う |
徴収方法 | 分割払い (6月、8月、10月、翌年1月の末日) 一括払い |
1/12を毎月給料から天引き |
以上のようにフリーランスでは普通徴収、会社員では特別徴収となるので、両者で住民税の取り扱いは違います。
会社を退職してフリーランスになったら、自分で毎年納付しなければならないので、会社員からフリーランスになった人は注意です。
納付はコンビニや金融機関の窓口などで納付できます(後ほど納付方法は詳しく説明します)。
住民税を納める自治体
住民税は基本的に居住している地域に納めることになっています。
もっと詳しく言うと、「その年の1月1日現在居住している地域(住民票所在地ではなく実際に居住している住所)」に納付します。
もし、1月2日以降に引越しをして住んでいる市区町村が変わった場合は、引き続き「1月1日時点」の自治体に、年末まで住民税を納付することになります。
所得税ゼロなのに住民税がかかるケース
確定申告の計算上、所得税は0円なのに、住民税がかかる場合があります。
その理由は、所得税と同じく住民税にも「基礎控除」があり、この基礎控除額が所得税は48万円、住民税が43万円と異なるためです。※平成30年に基礎控除の税制改正がありました
例えば年間所得が48万円の場合で見てみましょう。
- 所得税 所得48万円-基礎控除48万円=課税所得0円
- 住民税 所得48万円-基礎控除43万円=課税所得5万円
住民税のみ5万円×10%で支払い義務発生
上記の場合、所得税は基礎控除48万円以内のため非課税ですが、住民税は基礎控除43万円を超えるために納税が必要です。
つまり、住民税をなるべく支払いたくないならば、所得は43万円以下に抑えるようにしましょう。
初年度のフリーランスなら、意識的に抑えられる人は多いかと思います。
住民税は経費にならない
住民税や所得税は事業の経費に計上できないため、納付したとしても、帳簿への記載は必要ありません。
しかし、経費にできない税金でも、事業用の銀行口座からやむ負えず住民税を支払った場合は、帳簿には「事業主貸」で仕分けましょう。
例えば、事業用口座から10,000円の住民税を支払った場合は以下のように仕訳をします。
(借型)事業主貸 10,000円 | (貸方)現金 10,000円 |
一方、「仕事と関係のある税金」の場合は、経費として計上できます。
経費にできる税金として代表的なものは以下の通りで、「租税公課」の勘定項目で計上できます。
- 個人事業税
- 固定資産税
- 消費税(税込処理の場合)
フリーランスと住民税:計算方法
住民税の基礎的な知識を把握したうえで、住民税の計算方法についても知っておきましょう。
住民税を計算するには、
「所得割:所得×住民税税率(10%)+均等割:5,000円~6,000円
→所得割と均等割を合計して算出します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
均等割(所得に関わらず一律の部分)
均等割の内訳も細かく決まっていて、自治体によって金額が変動します。
- 都道府県に対して支払う部分 1,500円~2,500円
- 市区町村に対して支払う部分 3,500円~4,400円
→合計すると年間5,000円~6,000円
県や市区町村次第で均等割の部分を増減できるため、住んでいる自治体によって、「住民税の安い・高い」の違いが出てきます。
なお、東日本大震災の復興特別税により1,000円引き上げられて、上記の現在の額になりました。(適用期間は2023年までとなります)
所得割(所得に応じて変わる部分)
所得割は、前年の所得金額から算出します。
(所得金額-所得控除額)×税率(10%)-税額控除額
- 所得金額:売上から経費を引いた純利益
- 所得控除額:所得から一定の金額を差し引くもの 社会保険料控除、基礎控除、扶養控除など
- 税額控除額:所得税額から直接差し引けるもの 住宅ローン控除など
例えば年間売上が400万円、所得控除が100万円、経費が100万円のAさんのケースで見てみましょう。
- 400万円(売上)-100万円(経費)-100万円(所得控除)=200万円(課税対象となる所得)
- 200万円×10%=20万円
このようにAさんの所得割は20万円になり、もし税額控除がある場合はここから差し引きます。
フリーランスの場合は、65万円控除ができる「青色申告控除」などを利用することで、課税所得を安くできます。
控除について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

住民税の税率
住民税の税率は一律10%となります。
- 都道府県の住民税税率 4%
- 市区町村の住民税税率 6%
所得税と異なり累進課税ではなく、どれだけ多く稼いでる人でも、逆に少ない人でも住民税の税率は10%です。
そのため、かけだしのフリーランスの方は意外と高く感じるのではないでしょうか。
例えば、所得が300万円、所得控除の額が100万円なら、差額の200万円の10%にあたる20万円の所得割と、均等割を納付しなければなりません。
分割払いにできたとしても1回5万と負担は大きなもの。日頃から準備しておきたいところです。
フリーランスと住民税:支払い方法
次に、住民税の支払い方法や、支払い納期が遅れた場合はどうなるのか?について説明をしていきます。
住民税の支払い方法はさまざま
住民税の支払い方法は以下の通りです。
- 金融機関の窓口
- コンビニ
- 銀行口座振替
- 役場の窓口
- クレジットード(自治体による)
- LINEPay、PayPay(自治体による)
住民税は、納付書に指定された金融機関の窓口とコンビニ、役場の窓口で現金で納付できます。
また、納付書がPay-ezsy(ペイジー)に対応していれば、インターネットバンキングとモバイルバンキング、ATMでも納付が可能です。
クレジットカードに関しては、支払える自治体と支払えない自治体があります。
支払える自治体を調べるには「Yahoo!公共支払い」の「住民税」のページから最新情報を確認しましょう。
クレジットカード払いなら、実際の支払を引き落とし日まで納付を遅らせたり、ポイントを貯めたりなどのメリットもあります。
またLINEPay、PayPayを使えば自宅にいる状態でも支払えます。利用できるかは各サイトでチェックしてみてください。
住民税の納期が遅れた場合
住民税の納期が遅れた場合は延滞金がかかってしまいます。
どのくらい延滞金がかかるかというと以下の割合が定められています。(令和2年以降の場合)
- 納期限1カ月以内の延滞金の割合が年2.6%
- 納期限1カ月経過後は延滞金の割合は年8.9%
上記の延滞金の割合は年により変動しています。
例えば以下のケースで見てみましょう。
- 納期限:令和2年3月31日
- 納付年月日:令和2年5月15日(経過年数は44日:3月31日~5月15日まで)
- 納付額:10万円
■期限後1カ月の計算(3月31日~4月30日)
100,000円×30日(3月31日~4月30日)×0,026÷366日(うるう年)=213円
■期限後1カ月を経過した計算(5月1日~5月14日)
100,000円×14日(5月1日~5月14日)×0,089÷366日=340円
よって、延滞金額は合計した553円となります。当然、延滞期間が伸びれば伸びるほどに金額は増えていきます。
もし支払が難しい場合は、早めに自治体の窓口に相談しにいきましょう。
課せられる住民税を減らすために、節税対策を取っておく方法もあります。節税について詳しく知りたい人は以下の記事を参考にしてみて下さい。

会社員からフリーランスになった人の注意点
会社員からフリーランスになった人は、普通徴収へ切り替えることになりますが、会社を退職する時期により対応が違うので注意が必要です。
以下にて時期別の注意点について説明をしていきます。
退職時期が1月~4月の場合
退職した月から5月までの住民税が給与から一括徴収されます。6月以降は自分で納める普通徴収に切り替えることになります。
退職時期が5月中の場合
5月分の住民税が給与から徴収されます。6月以降は自分で納める普通徴収に切り替えることになります。
退職時期が6月~12月の場合
次の年の5月までの住民税を辞める会社に一括徴収してもらうか、自分で納める普通徴収に切り替えるのかを選択します。
おわりに
これまでフリーランスに関わる住民税の計算方法や、支払い方法などを説明をしてきました。
フリーランスと会社員とでは住民税の徴収方法が違うので、必ず納付し忘れないように注意しましょう。
支払方法は現金だけでなく、クレジットカードやLINEPay、PayPayなどに対応している自治体もあるのでぜひ活用してみて下さい!
